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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-44

「駐車場に停まっている。」
『車種は?』
そう尋ねた俺に、彼はよくぞ聞いてくれたという様な表情を見せた。
「ミツオカ自動車、オロチ。完全予約注文制、限定400台の日本が誇るスーパーカーだ。スペックは……。」
『…わかった。』
俺はライファーの言葉をほぼ聞き流して答えた。
『他に俺に伝えるべき事は?』
「姫が目を覚ましたそうだ。」
ライファーは何故それを先に言わなかったのだろうか。俺にとっては車のウンチクを並べられるよりも、何よりも先に伝えて欲しい情報だというのに。
俺は預かったばかりの鍵を手にして、駐車場へと向かった。
着いた先に停められていた彼の車は、予想よりも遥かに素晴らしいものだった。彼が興奮するのも理解出来た。
名の通りオロチをモチーフに作られた、圧倒的な存在感。これはフェラーリにも、ランボルギーキにも劣らないだろう。
俺は彼女のいる病院へと急いだ。

病室の前には彼女の上司、永井が俺を待ち構えていた。
「彼女は貴方の身を酷く案じていました。ですが、真実は貴方の口から伝えられるべきかと思い、私からは何も伝えていません。」
彼はそう言って、少し微笑んだ。
「彼女をよろしくお願いします。」

彼女は俺の嘘と偽りを、許してくれるだろうか。組織に潜入してからの彼女を、ずっと苦しめてきたこの俺という存在を。
彼女に立場を偽って近付き、彼女を捜査に引き入れる為に欺いた。
だがその事を後悔はしていない。
互いを偽って過ごした時間の中にも、嘘や誤魔化しなどない、剥き出しの自分達で向き合った時間も、確かにあったのだから。
その時間を共有するうちに、俺達の中には互いを想う真実の気持ちが産まれたはずだ。
俺のその気持ちに嘘は無い、そして君のその気持ちも嘘でない事を願っている。
それを確かめる為にも、彼女に真実を伝えない訳にはいかない。伝えなくては、俺の望んだ未来が訪れる事も無いのだから。
もし君が俺を許し受け入れてくれるのなら、俺はその未来で君に償いをするつもりだ。君に罪の意識を持たせた、苦しませてしまった事に対する償いを。

俺がこのドアを開く時、彼女は真実を知る。
―コンコンッ
俺は控え目に病室のドアをノックした。
「どうぞ。」
彼女が応じるのを待ち、静かにドアを開く。『玲良…。』
俺は彼女の姿を目にした瞬間、愛おしさがこみあげて来るのを感じた。
そして愛しい彼女の名を呼ぶ。
彼女はゆっくりと顔を上げ、俺を凝視した。
『玲良。』
俺はもう一度私を呼んだ。
「う…そ……。」
彼女の表情には、はっきりと驚きと戸惑いの色が伺える。
『本当はすぐにでも君に正体を打ち明けたいと思っていた。』
俺は側へ歩み寄ると、きつく玲良を抱きしめた。
「一体どういう事なの?」
彼女の頬を伝った涙が、抱きしめる俺の腕を濡らした。
その涙はどんな意味を持つのだろうか。怒り、悲しみ、困惑、安堵、喜び。
『俺はINCのアンダーカバーだったんだ。騙していてすまない。』
俺は静かに言った。彼女が真実を受け入れてくれる事を願って。
だが俺の中には確信もあった。彼女はきっと俺を受け入れてくれるだろうという確信が。
『少し俺の正体をほのめかす様な発言もあったと思うが、気付かなかったか?』
彼女は少し考える様な素振りを見せ、ゆっくりと答えた。瞳からは今も涙がとめどなく溢れている。


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