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レン
【二次創作 官能小説】

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レン-45

「私と一緒で…芝居をしている…?」
『そうさ。芝居を続ける事が俺の仕事だった。』
俺は優しく彼女の髪を撫でた。
「だから出世も望まなかった訳…。』
彼女の声が安堵したように落ち着きを持った。
『あぁ、君と一緒で俺は知りたがりだとも言った。』
「どうして気付かなかったのかしら。」
彼女は涙を拭いながら、俺に微笑んだ。
『俺はすぐに君の事がわかったのにな。』
俺は少し含みを持たせた言葉を選んで言った。
「何故なの?どうして私が麻取だとわかったの?」
俺は彼女の顔に唇を寄せ、唇で溢れる涙を拭うと答えた。
『君はINCの日本駐在員との連絡係をしていた事があったろう?』
「まさかあなたがINCの日本駐在員だったの?!でも、私は電話連絡しか行っていなかったわ!」
「声さ。仕事柄、一度聞いた人の声は自然と覚えてしまうんだ。」
本当はずっと君の声に牽かれていたんだ。そう加えようとしたが、彼女の頬に再び涙が伝うのを見て口をつぐんだ。
愛の言葉を囁くのは、彼女に幾つかの事務的な情報を整理してもらってからでも構わないだろう。
愛の言葉に涙は不要だ。
『君にいくつか隠し事を暴露しようか。』
「たくさんありそうね。」
彼女は溢れる涙を必死に拭いながら言った。
『まず君を襲ったチェコ人のダークネス密売人を殺した事に始まる数々の刑事訴追の恐れがある行為についてだが、INCが全て緊急避難措置として刑事訴追を免除した。もちろん君の事も。』
「そう……。他には?」
彼女は動揺する心の中でも、冷静に情報を整理しているようだ。
俺は彼女の座るベッドに腰を下ろした。
『常務と常務の部下の身柄だが、実はレストランの後すぐにINCが確保していた。常務に飲ませたダークネスも偽物で、本当は只の睡眠薬だった。』
「なるほど、それで組織による常務への報復は行われなかったのね。」
彼女の思考は着々と、俺の偽りと真実とを繋げていく。
麻薬密売組織の幹部としては、伝える事が出来なかった真実を。
『あぁ、殺されてしまっては元も子もない。組織には俺が常務を処分したと報告したんだ。大した情報は握っていなかったが、奴にはきちんと罪を償ってもらおう。』
「当然ね、あなたが5日間姿を見せなかったのはその事後処理の為だったのね。隠し事はまだある?』
彼女は俺に笑顔を向けた。まだ涙は拭い切れていなかったが、それは芝居のない素直な笑顔だった。
『君に俺の事も少し知ってもらおうか。』
「知りたいわ、聞かせて。」
俺も彼女に満面の笑みを向けた。
『疎遠の親父、親父もINCにいるんだ。』
「INCの科学者?!』
『あぁ、親父は俺もINCの科学者にしたかったようだが、俺は各国の駐在官を経て潜入捜査官になったんだ。芝居が得意な俺には適任だったね。』

「一つ教えて…。私を愛していると言ったのも………、芝居だったの?」
情報の処理が粗方済んだ後、彼女は伏せ目がちにそう言った。
その問いに対する俺の答えは、ずっと前から決まっている。
『言っただろう。君は俺から離れる事は出来ない、根拠は俺と君の中にある、と。答えは俺と君が同じ潜入捜査官という立場の他にも、もう一つあるだろう?』
「私の心に浮かんだ答えとあなたの心にある答え、一緒かしら?」
当然だ。俺が君を愛していると言った気持ちに嘘は無い。そして君も…。
『一緒さ、俺達は出会った瞬間から互いに惹かれあった。そして同じ時を過ごすうちに、俺達の間には紛れもない愛が生まれただろう?それが答えだ。』
彼女はその答えを素直に受け入れてくれた。
「そうね、私達は最高のパートナーだもの。」
今度は彼女の方から強く俺を抱きしめた。
そして俺は彼女を抱き返す。
彼女の温かさがとても心地良かった。この温もりは二度と離したくない。


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