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十六の春
【純愛 恋愛小説】

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十七の秋〜ヨイモミジ-1

サァッッ――。

少し刺々しさを増した冷たい風が頬を撫でる。空は、まるで俺の心を写すかのように見事なまでの灰色だった。



真理が事故にあってから三ヶ月程度が経つ。

真理が事故にあったのを聞いた時、俺は入ったばかりのバイト代を握り締めて真理の実家へと向かった。

のどかな田園地帯に建つ大きな平屋。真理に前に教えてもらった家の戸を叩く。おばさんに真理の入院先を教えてもらうためだ。

しかし、真理のお母さんから返ってきたのは意外な言葉だった。


「…なんでですか!?どうして!!」


真理には会わないでほしい。

それがおばさんからの返事だった。

おばさんが理由を教えてくれることはなく、病院の場所も分からない俺は引き下がるしかなかった。

何度か連絡をとろうとしたが、真理の携帯は事故の時に壊れたのか、番号が変わっていて今でも真理には会えずにいる。


「真理……」


俺が医者になれるほど頭がよかったなら、ずっと真理のそばに居てやりたい。

俺に山のような大金があったなら、最新の設備が整った病院に彼女を移すだろう。

俺にヒーロー漫画みたいな腕力や超能力があれば、立ち塞がるもの全てを薙ぎ倒してでも真理を連れ出しみせる。

だが、そんなのは所詮ガキのないものねだりと一緒で。どうにかしたいのに、どうにもならない。そんな考えが、俺の心を灰色にしていった。



だからかもしれない。俺は『あの木』の下で真理の面影を見た。

俺と真理が付き合い始めた頃、俺たちはよくあの木の下で待ち合わせをしていた。

その木は近くの公園にあって、秋になると真っ赤な葉でみんなを楽しませてくれる、大きな楓(かえで)の木だった。

夜になると街灯と月明かりに照らされて、まるで夜桜のようだったので、みんなから「宵紅葉(よいもみじ)」と呼ばれていた。



そして今俺は、あの頃と全く同じ景色をこの目に焼き付けている。


「真理……?」


嘘だ。

彼女は今病院にいるはずだ。

なのに、今宵紅葉の下で立っている彼女は、あまりにも真理に似ていて……。


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