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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの初恋-5

「ふふっ!」
(これでよく寝顔が見える!あっ、でもコレ…どうしよう?)
眼鏡を外したまでは良いけれど、今度はその眼鏡の置き場所に困ってしまう。
『変な所に置いたら怒られそうだし…』などと考えている内に不意に思い立って、私は眼鏡をそのまま自分にかけてみた。
(あれ?この眼鏡…)
目元に近付けた途端、私にしては珍しく…って、自分で言うのも変だけど、直ぐにその違和感には気が付いた。
(これってもしかして…)

「面白い?」
「ひゃっ!」
眼鏡の違和感に首を捻った途端、直ぐ近くで声がした。
あまりにいきなりだったその声に、私の心臓が痛みを感じそうな程にバクバクしている。
「こっ、光輝君っ!?」
(おっ、驚かさないでよぉ…)
さっきまでずっと私の目の前で寝ていた人…それはもちろん、光輝君!って、敢えて言うまでもないよね…
光輝君はいつの間にか起きていたらしく、寝ていたままの姿勢で目だけを開けて、ジッと私を見つめている。

「お、起きてたの?いつから?あっ、えっと…そう、眼鏡!外しておいてあげたからっ!」
自分で言っといて、何を言っているのかがよく解らない。
早口で巻くし立てる私を見て、光輝君はフッと笑うと、その手を私の頭の上に乗せた。
「少し落ち着けば?」
「はい…」
いっぱいいっぱいな私は、光輝君の言葉に素直に口をつぐむ。
「良くできました。」
光輝君は満足気にそう言うと、今度は私の髪を優しく撫でてくれた。
真っ直ぐ私を見つめる瞳も物凄く優しくて、今は驚きとは違う理由で心臓がドキドキしている。

「ね、ねぇ…」
「ん?」
いつまでも治まらない心臓の鼓動に少し苦しくなってきた私は、視線を反らしながら言った。
「……いつから起きてたの?」
「ずっと起きてたよ。」
「!!!」
光輝君の口から全く予想していなかった言葉が返って来て、私はまた驚かされてしまう。
(ず、ずっとって…えっ、嘘っ!?)
「ほ、本当に?ずっと起きてたの?」
「起きてた。」
「私が…ここに来た時から?」
「もちろん。」
(そ、そんなぁ…)
光輝君の言葉に、私の顔が一瞬でカッと熱くなる。
私が光輝君の髪に触れたのも、寝顔を観察してたのも、妙な言い訳をして眼鏡を外したのも…全部本人は知っている。
それを思うと…穴があったら入りたいよぉ……

「ははっ、聖…可愛い。」
更に追い討ちをかけるかの様に、光輝君が笑顔でそう言う。
私はもう恥ずかしくて恥ずかしくて…赤い顔を見られない様に、両手でパッと顔を覆った。
でも、それとほぼ同時に、光輝君がいきなり強く声を張る。
「危ないっ!」
(え?)
一瞬、頭の中が真っ白になった。
しゃがんだままでいた体が、何かに強く引っ張られる感じがする。フワッと…重力に導かれる様に後ろへと……

ガタ、ガタン…バンッ!

次の瞬間、教室内に机やら椅子やらが倒れるけたたましい音が響き渡った。
全ては一瞬の出来事で、気付くと私は、冷たい床の上に横たわっていた。ボーっとする視線の先には、天井が広がっている。
上手く機能しない頭で、何が起きたのかを必死に考える…どうも私は、バランスを崩してそのまま後ろに転んでしまったみたい。


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