投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

いつか、目の前にの最初へ いつか、目の前に 11 いつか、目の前に 13 いつか、目の前にの最後へ

風に連れられて……(到着)-1

東署地域課青少年育成・教育室 通称、説教部屋。
人情派として知られる地域課の課長が喧嘩などを穏便に解決するために喧嘩両成敗の信念で作った部屋である。
「いいか、若いってのは良い事だ。だがなお前達は若さの使いどころを間違っているぞ」
巡査長の対面に西口、東山、南原が座らされかれこれ一時間近く説教をくらっていた。
《ねぇ、いつになったら開放されるのかな?》
《黙って聴いてろ》
「おい! 説教されてる身で私語はいかんな」

彼らは当分の間開放される事はなかった。


一方、順一は三馬鹿トリオと違いミナモとの時間を楽しんでいた。
「七鳥さんの家って遠いんだね」
「ええ、ちょうど目の前に見えてる山の上にあります」
目の前の山? あの隣の市との境になってる苗豆山(なずさん)の事だろうか。
やっぱり金持ちは違うなと思いつつ、真剣なまなざしで前方に注意を払っているミナモの横顔に見とれていた。
山よりこちらを見ていたい。
マナミちゃんはお腹がいっぱいになって眠くなったのか、今はベビーシートでグッスリと眠っている。
「そういえば七鳥さんって何人家族なの?」
「私とマナミと兄。あと、お手伝いさんが一人と庭師が一人います」
「ご両親とは別に住んでるんだね」
「父は病院の近くにすんでいます。なんでも急患に対応できるようにという事らしいですね。母は今はアメリカにいると思います」
「思います?」
「ええ、母は世界中を飛び回っていますから、私も居場所をしりません」
「す、すごいお母さんだね……」
ミナモはふふっと笑った。
「そうですね、私と順一郎さんとの結婚も母が決めたことでしたし。父も母には頭が上がらないみたいですし、確かに母はすごいですね」
「会ってみたいような、会いたくないような……」
ミナモはまたふふっと可愛らしい笑い声をあげた。
車は苗豆山の裾野を走っている。


それから10分ぐらいたっただろうか、道は大きな門に行き着いた。表札には中山と書かれている。という事はここがミナモの家か……。
でかい、とにかくでかい。テレビで紹介される時に東京ドーム何個分とか甲子園球場何個分だとかいわれそうなほどでかい。
とりあえず、建物らしき所までに行き着くのに車で二分ほどかかった。
途中には季節の花々が咲き乱れ、なんとも西洋風の庭園のようになっていた。
車何台止まるんだよ! って思うぐらい広い車庫に車は停車した。
「なんか、何もかもすごいね……」
「そうですね、全部母の趣味らしいです。私としては広すぎて困る時のほうが多いですけど」
マナミちゃんを抱き抱えるように車から降ろし、ベビーカーにのせたミナモは「こっちです」と言って歩き出した。


車庫から住居らしい建物までは歩いて3分ぐらいだった。
歩いて見ると分かるが、3分歩くと結構な距離があるのだ。
「すみません、無駄に広くて」
ミナモが本当に申し訳なさそうな顔で言った。
西口あたりがこんなセリフをほざきやがったら迷わず殴るが、ミナモはかわいいので許す。
ん? なんだ文句あるか?


いつか、目の前にの最初へ いつか、目の前に 11 いつか、目の前に 13 いつか、目の前にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前