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いつか、目の前に
【コメディ 恋愛小説】

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風に連れられて…… (誘い)-3

「まあ押えろ東山、そんな君にいいことを教えよう」
南原はポケットから一冊の手帳を取り出した。
「うお、久しぶりの南原手帳だぁ」
南原手帳、学校内の噂やその真相。はたまた誰も知らなかったような事件などが記載されている、なんとも恐ろしい手帳の事である。
「この間、クラスの女子が秘密裏にやっていた企画の結果なんだがな」
ページをペラペラとめくって目的のページで止める。
「どんな企画だ?」
「まあ人気投票みたいなもんだ」
「で? どうだったんだ?」
南原はあくまで無機質な表情を崩さずに切り出した。
「第一位がなんとお前だ」
「えぇ! 東っちが一位!? みんな趣味が悪 いてててぎゃぁぁぁぁ!」
西口の口を引っ張り、締めにかかとで爪先を思いっきり踏んでやった。
「ちなみに理由を聞きたいか?」
無言でうなずく。
「顔はまあまあだが性格が……。 擦れ違っただけでにらまれた。 バックにはヤクザがいそう」
「おい!」
「部屋に改造モデルガンを隠し持っている、天井には夏川純のポスターを張り付けている」
「てめぇ! な、お前それぇ!!」
西口は今にも暴れ出しそうな東山を「どうどう」となだめて、「で、結局なんの投票結果なの?」と聞いた。
「クラスで一番怖い奴、ちなみに最後の二つは投票理由じゃなくて俺が独自に調べたものだ」
南原はパタンと手帳を閉じると冷めてしまったポテトをもふもふと食べ出した。
それを見た東山が暴れ出したのは言うまでもない。


案内されたのは窓際の席だった。
ミナモは本当に行きつけだったようで店長さんや店員さんと楽しそうに話しをしていた。
マナミちゃんはと言うとお水とお絞りを持ってきた店員さんが当然のように抱き抱えてすこし離れた席で離乳食のようなものを食べさせてもらっていた。
味の方もまあまあで、俺はたまらずにミートソーススパをおかわりしてしまったぐらいだ。
そしてちょうど食事を終えようとしていた頃。
赤い回転灯をぐるぐる回して白地に黒で県警と書かれた車が一台道を挟んだ所に止まった。
「なにかあったんでしょうか? もしかして強盗……」
「それにしてはパトカーの数も少ないし、たぶん客でも暴れたか、無銭飲食か……。でもファーストフード店で無銭飲食は無理か」
そんな話をしていた所にシェフがよってきてミナモの頭をまるで子供を褒めるときの様になでて今日の料理の出来を聞いて来たりした。
この店の人達とミナモは家族のように仲が良い、もう行きつけのレベルを超えていると思うのは俺だけだろうか?


「若いから暴れてしまいたい時もあるだろうが人に迷惑をかけちゃいかんな」
ファーストフード店の事務所、50代半ばの警官と部下であろう20代前半の男の前にはパイプ椅子に座らされた男が3人。
「うわぁん、僕は止めようしてたのにぃ」
と泣き叫ぶ西口。
「全部俺が悪いんです、こいつらは関係ないんです」
と男儀をみせる東山。
「…………」
全く別の方を向いてただただ黙秘を続ける南原。
「巡査長、ここで説教すると店側に迷惑がかかるので署でゆっくりと……」
「それもそうだな、ほら行くぞ」
三人を軽々立たせると全員の腕を引っ張ってパトカーの後部座席に押し込んだ。
「心配すんな、これは補導じゃなくて、俺からの熱い説教だからな」
「だから学校で謹慎とかの処罰は無い、でも巡査長の説教は長いから覚悟しといたほうがいいよ」
二人の警官は笑っていたが、後ろの三人は複雑な表情をしていた。

「あれ? いつの間にかパトカーいなくなってる」
シェフと話をしている間に行ってしまったようだ。
「そうですね、それではそろそろ行きましょうか?」
「そうだね」
俺達はきっちり割り勘して(ミナモがおごると言ってくれたが男として払わない訳にはいかない)店員さん、店長さん、そしてシェフ達に見送られミナモの家へと向かったのであった。


「もうすぐ着くな、坊主達ついたらまず小便してこいな。説教中は行かさんからな」
男はがはははと大きな笑い声をあげた。
さて、三人の運命やいかに……


〜続く〜


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