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「保健室の小さな秘密」
【教師 官能小説】

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想いの温まる場所-3

――今時珍しくはないとはいえ、外国の血が四分の一入っているだけで、なんとなく異質なものを感じてた自分になんだか自信が持てなくて。
自分は嫌われてないと自覚したくて…。

外見を強みに出来た事でそれは少しは解消されたけど。
いつも心のどこかに不安があった。

それを埋められるかと思って、好意を持って寄って来る子達と遊んだ事もあった。
でも、体は満たされたとしても、心まで満たされる事は決してなかった…。
なんだか虚しくて仕方なかった。
虚しさを埋める様に部活に打ち込んでた日の方が多いくらいだ。
ただオレは。

健介の様に…、一人の人を真剣に好きになりたかった。
自分の居場所が欲しかったんだ。

「オレ昼メシ買って来る」

無性に奏子の顔を見たくなって、衣装を着たまま視聴覚教室を飛び出して階段をかけおりる。

ガラガラッ!
保健室のドアを開けると、奏子の姿はそこになかった。

「…どこ行ったんだ」
鍵が閉まってないってことはどこか近くにいるはずだ。
マントを翻しながら廊下を走る。北校舎はあまり出しものの店がないせいか人の気配があまりない。
薄暗い廊下にオレの足音だけが響いて、それがまた寂しさを増長させる。
曲がり角を曲がった時、
――ドンッ!
「きゃっ!」
ドサドサっとパンが落ちる。

「悠…?何その格好…ってわっ…」
オレはぶつかった相手が奏子と認識した瞬間、強く抱きしめていた。白衣を着た細い肩を強く。

「悠どうしたの…?」
「吸血鬼だから、美女の血を貰いに来た」
心配そうな奏子の言葉に、オレはいつも通りに笑ってる…つもりだった。
「もう、見られたらヤバイでしょ。…それに冗談言ってる顔じゃないんだけど」
奏子の黒目がちの瞳がオレの心を射ぬく様に見上げて来る。
その瞳を見ていると、内心を見透かされた気分になった。

すごいな、奏子は。
いつも通りに笑ったつもりだったのに。
奏子に偽物の笑いは通用しないって事か。

腕の力をゆるめて、奏子を見下ろす。
すると奏子の足元にパンが五個程落ちているのに気が付いた。その視線を奏子が追う。
「あぁ、お昼買いに行ってたから」
身を屈めて奏子がパンを拾う。
「そんなに食べるの?」
だって五個はさすがに食べ過ぎじゃね…?
「あ、悠も食べるかなって…思って」

え――…。
思わず顔が綻ぶのがわかる。

参った…、嬉しい。
嬉しさのあまり、笑い声がもれる。

「だってお昼にまた来るって言ってたから!もし来なくても持って帰ればいいと思って…」

「ありがと…。じゃあ、パンと奏子を頂きます」
もう一度腕に力を込めて抱きしめる。
「痛い痛い!ちょっと!」
あ、筋肉痛だって事忘れてた。
「ごめん」
奏子から手を離し、顔を見る。さっきまでの不安な気持ちが和らいでいくのがわかる。
広がっていく温かな想い。

すごいにやけた顔をしてるんだろう、
「ふふっ、変な悠」
奏子が肩を小さく震わせながら笑う。

でも、その奏子のふんわりとした笑顔が心に染み渡り、だんだんと光を灯していく。


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