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僕とお姉様
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僕とお姉様〜会いに行く〜-3

いやいやいや、
待て待て待て、
これは予想外の展開だぞ。
こっちはここに来るまで色々考えてたんだ。ちょっとは寂しがってくれてるんじゃないかって淡い期待も抱いた。意外と寝れないくらい落ち込んでくれてたらいいなんて思ったり。
でも現実のお姉様はすっかりイメージチェンジされたベッドでいつも通り爆睡してるだけ。

「…ふっ、」

口からは自虐的な笑いが漏れる。
寝顔を見たらすぐに帰るつもりでいた。もし起きていたらまだ怒ってるフリをするのもアリかなとか―――

考えすぎて思考回路が壊れたらしい。
次の瞬間、僕はお姉様の布団を勢いよく剥ぎ取っていた。
突然外気にさらされて驚いたのかすぐに目を覚まし、僕を見てその目は更に大きく開いた。

「山田!?」

飛び起きてまるで僕を確認するかのように何度も瞬きをしてる。

「何だよ、この部屋」
「帰って来た?」
「前の面影ゼロじゃん」
「山田…」
「質問に答えろって―」
「帰って来た…」

全く会話が噛み合っていない。ずっと同じセリフを繰り返してるし、分からないのはさっきから手を出したり引っ込めたりしてるお姉様の妙な動き。

「山田…」
「はいはい、山田です。帰って来ましたけど何か?」

投げやりな返答にお姉様の顔はみるみる崩れ、ついに泣き出してしまった。

「山田が帰って来たあぁぁぁ」

あっという間に号泣状態。
泣き顔を見るのはお姉様の失恋以来二度目。あの時は終始顔を伏せて泣いていたけど今日は……

「子供か」

突っ込まずにはいられない泣き方。大口開けてぼろぼろ涙を流して鼻水まで光ってる。

「山田ぁぁ、ごめんねえぇぇ」

これは、好きな人じゃないと可愛いと思えない姿だろうな。
僕は笑いをこらえながら声を出した。

「あのさぁ、この部屋。何でこんなに変わっちゃったの?」

お姉様は派手に鼻をすすりながらようやくその質問を聞いてくれた。

「山田っ…、いなくなっひっく、いなくてあたし…っ」

駄目だこりゃ。
まともに話せる状態じゃないな。
相変わらず手は挙動不審。伸ばそうとして躊躇したり、握ったり開いたり…

「手の動きが怪しいよ」

そう言うと、お姉様は恨めしそうに僕を見つめて小さく唸った。

「何」
「…やっぱ無理!我慢できない!!」
「は…」

何を我慢できないのかは尋ねる前に分かった。
伸ばした腕は僕の両脇を通って背中に回り、手は服をギュッと掴んだ。

「!!!???」

おいっ!!何してんのこの人いきなり!ていうか、我慢って?僕に抱きつきたいって事!?
突然の行動に焦る僕の気など知る由もなく、その腕の力は強くなる。

「山田ぁ、ごめん」
「いいって!分かったから!」
「口調が怒ってる」

照れ隠しだ!!
女子免疫ゼロの僕にこんな…、別に、やじゃないけど。

「怒ってないから、まずこの部屋の説明して」
「だって山田いなくて…ぃっく、部屋の雰囲気暗くて余計落ち込んで、だから…」
「そーゆう事は自分の部屋でやれよ!!」
「今はここがあたしの部屋だもん」
「じゃあせめて一言僕に言って」
「もう喋ってくれないと思ったの!!」
「…ぁ、そう」

なんだ、落ち込んでくれてたんだ。


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