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パレット 『初恋を貴方に』
【ボーイズ 恋愛小説】

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パレット 『魔法の言葉』-1

平凡な一日。だけど
今日は如月 昌仁と俺、川瀬 晶の二人で居残りをしている。正確には俺が。
授業中、完全に先生無視で昌仁ばっかり見てたからこのような事に。てことは、お前のせいじゃんか!
不意に微笑んで昌仁が俺の頭を撫でてくれる。
「早くそれ(反省文)おわして帰ろ?」
顔が熱くなってくる。嬉しい。でもやっぱお前のせい。
「晶さぁ。――今日俺ん家泊まんないか?」
えッ?
何で急に。そんなこと言うの?ええ?いきなりすぎて頭が追いつかない。しどろもどろになりつつも聞いてみなくては、解らない。
「何、で?」
「いや。ほら、い、息抜きにさ。和弥(母親)も泊まりに来いって言ってるし。あ、いや晶が嫌ならいいんだぜ?無理にとは言わないけど――」
そんなの、答えは一つしかない。
俺は抑えきれない気持ちで隣に座る昌仁に抱きついてしまった。シャンプーの香りがふぁっと、鼻をくすぐる。
「行くに決まってんだろ!」
つい頬ずりまでしてしまう。
俺は座高が低い為それは昌仁の肩に頬ずりするかの様でも羞恥心などは無く、ただ純粋に喜んでいた。
「あああ、っ…判った判った。くすぐったいからやめ、やめろ。うははは」
昌仁は首筋に触れる俺のくせのある髪をくすぐったがり、身をよじっていた。うりうり
そんな反応とられると止められなくなるって。
余計に顔をすりつけた。

「たっだいま〜」
いつもより上機嫌で帰宅。俺は叫んだ。
「お帰り」
「うわっっ」
予想外の展開だ。まさか親父が出迎えるとは。
誰も居ないと信じきって鼻歌を歌っていた自分が恥ずかしくなってきた。
驚きすぎて思わず一回入った自宅からまた扉を開けて外に出ようとしてしまった。
「おいおいおい。今帰って来たばかりなのに、何やってんだよお前は」
制服の襟をわし掴まれ、リビングまで連れていかれてソファに座らされる。
そして親切にも大好きなグレープフルーツジュースを出してくれた。
その行動に少し戸惑いつつも。いただきます、と言って俺は目の前のテーブルに置かれたグレープフルーツジュースの入ったコップを手に持ち、ゆっくりと飲みはじめた。
そのとき。親父が真剣な顔をして嫌な顔を近付けてきた。
しかし、何があるのかと身構えていた俺でさえも想定していなかった事を口にした。
「お前今日、昌仁くんの家に泊まりに行くんだってな」
ぶぶぅぅぅ―――
見事に俺の口にふくまれていたグレープフルーツジュースが親父の顔に勢い良く噴射された。
汚くジュースの雫が落ちていく。
「う…汚い」
苦い顔をして。タオルで顔を拭いた。
糞親父。
こんなでもすげー心がナイーブなんだぞ!
「うん。まぁね泊まるかなぁ」
俺は冷静を装った。親父がテレビをつける。
しばらくニュース番組のお天気お姉さんの声が、二人の沈黙を打ち消そうとしていた。
「それで泊まりに行くけど何か支障でも?」
親父は顔をテレビに向けたまま返事をした。
「いーや。ちょっと小耳に挟んだからさ。別に泊まりに行くのは構わない。私も仕事があるからな。ただ」そこで区切りをつけた。俺は親父がテレビではなくその裏の窓の向こうをぼんやり見つめていたのに気付く。
ただ、なんなのだ。
勿体ぶらず言って欲しい。言いたい事があるのなら、伝えたい思いがあるのなら。
それは俺自身でもあるという事を、微妙に拒否りながら。


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