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パレット 『初恋を貴方に』
【ボーイズ 恋愛小説】

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パレット 『魔法の言葉』-3

「怒ったのか?」
「怒ってなんかねぇよ」
「安心しろ、俺がお前の嫌いなもん忘れるわけねぇだろ」
「‥‥‥‥」
「?」
昌仁は ズルいよ。馬鹿。
「お邪魔しまーす」
俺は昌仁の家の人によく聞こえるように声を張り上げた。
「いらっしゃい。相変わらず元気ねぇ」
昌仁のお母さん和弥さんが笑顔で出迎えてくれた。
和弥さんは近所でもかなり有名な美人さんで、旦那さんも美人(美男?)なせいか、そんな二人の親の間に生まれた昌仁もその妹さんも美人だ。
羨ましいかぎりであるぞ。「まだお夕飯もお風呂も準備してないの。悪いんだけど昌仁。晶くんと、もう少し二階で時間でも潰してて。ね?」
恥ずかしそうに言いながら和弥さんは廊下突き当たり、リビングに出るであろう扉を越えていった。
昌仁が俺の荷物を持ってくれて階段を上がっていく。俺は急いで階段を上り追いつくと、昌仁の白いTシャツの裾部分をひっぱった。「うあ、危ないよ。晶」
「うん。ありがとう」
そのまま階段を昇りきり昌仁の部屋に入る。
開いた窓から風が入り込み心地よく頬を撫でると同時に、昌仁の部屋の机の上に置いてあったギターの本ぱららららッ、と連続して捲れていった。
ああ、久しぶりだなぁ。昌仁の部屋に入るの。懐かしい。
俺は昌仁のベッドに飛び込んだ。うお。ふっかふかだ!
「あはーん。気持ちいい〜どうしてこうもアキの家のベッドは寝心地がいいんでしょねぇ」
昌仁の匂いがしっかり付いた枕に顔をうずくめる。
「はいはい。よかったな。しばらくそこに居ていいから。ん。アイス、喰うだろ?」
殆ど軽く流されてアイスを手渡される。ソーダ味のあれ。
「うん。いただきます」
ペロペロと少しずつ喰っていく。舌先が麻痺る。
「晶。それうまい?」
親父何やってるかな。なんだか妙に気になる。
「む、ヤな態度。喰っちまうからなぁ」
ぱく!ぼがんっっ!!
「痛っ――何するんだよっ」
「だってアキ、俺のアイス喰うから」
昌仁は少し涙ぐみながら言ってきた。強くやりすぎたかな?俺も手加減が判らない。
「やっぱり聞いてねぇ。上の空だもんなぁ。いつも言ってんだろ。一人で悩むなって。お前また何か悩んでる」
俺の鼻をぴんとつつく。
「言え。言わなきゃ技かけるぞ――おいしょっと。今日はアキレスけん固めな」昌仁が俺の寝転がるベッドに上がり、俺の足に足を絡めてくる。うおぅ。俺は男だ。
「いゃだぁっ。。言うよ、言うから」
昌仁は足を解いてくれたが体勢はほぼそのままだった。
「…俺ん家、今日は親父が居てなんか心配でさ」
天井を見つめぼやいてみる。その時昌仁が俺の前髪を掻き上げてくれた。ドキリとする。
「ばーか、そうならそうと言えばいいだろ。俺は強制してるわけじゃねぇんだから」
優しく、でも鋭い感じに俺の目を覗き見て言ってくる。心臓のドキドキが止まらない。
「で、どうする?」
俺の独特のくせっ毛を指でいじりながら昌仁が聞いてくる。どうするったって。「…俺帰ってもいい!?」こんな事言ったら悪いよね「ああ、よく言った。いいよ。帰りな」
昌仁優しすぎるよ。俺は昌仁の言葉を聞いてすぐにベッドを降りて部屋を出た。急ぐ理由も無いのに。きっと胸のドキドキを聴かれたくないからだ。
「あ!晶、待てよ。ちょっと待てって」
階段を掛け下りる。昌仁が裏から着いてくる。何でこんな態度しかとれないんだろ。自分勝手。
「お邪魔しましたッ‥‥あ」
「晶!」
な、なにこれ。身体が壊れそう。
裏から追い掛けてきていた昌仁は玄関先で俺を抱き締めてきた。
「晶。気を付けて帰れよ。此処らは変質者多いからな。お前みたいに‥可愛いと連れて行かれる」
へ。可愛い?嘘だろ。
「っあ、ごめんっっこんなつもりじゃ」
ああ、ヤバい。幸せで夢と現実区別できない。俺の身体から離れていく腕を淋しく思った。
「ありがとう」
「気を付けて帰れよ」
今度はもう 泣かないから
「あ、晶?!何でお前」
誰の為に帰ってきたと思ってんだよ。糞親父。
「いいーの。ああ風呂入ろう」
風呂場へ行く途中。親父の笑った顔が見えた気がした。
「ありがとう」
声がちいせぇよ


魔法の言葉。全部手に入れたいのに。空回りしてるなぁ


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