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ツバメ
【大人 恋愛小説】

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ツバメD-1

「綾瀬さんがいつも考え事してるのって、彼が理由なんだね」
『えっ?』
くすくすと笑う千川くんを余所に、あたしの顔は動揺を隠せなかったと思う。


第五話
男の嫉妬(後編)



『はあ』
あの日以来、燕となんとなく気まずい。

千川くんとは何にもなかったわけだけど、よく考えればあたしは、多少はそのつもりで飲みに行く話を承諾したのである。
あの日、燕が専門学校に進学するなどと言い出した日から、あたしは確かに別れるということを決意した。
だけどその場で別れたわけじゃなくて、あたしにいい男ができたら別れると決心した。
でもそれって最悪じゃん。

燕がフラフラするのに呆れたのに、あたしはまだ燕と付き合ってる。
結局、あたしは新しい誰かができないと別れないくせに、誰かができると燕を捨てようとしているのだ。

燕が専門学校に行くなんて言い出したから、その時はムカっときて罪悪感なんて感じなかったけど、今は罪悪感でいっぱいである。
まあ、別れてあげたほうが燕にとっては自由になれていいんだろうけど、正直、燕の真意がわからない。

「綾瀬くん、業務開始したよ」
『あ、は、はい』
ぼーっと考えたら、いつの間にか始業していた。
課長に頭を下げて、お茶をくみに行く。



「綾瀬さん」
『…なに?』
業務が終わったあと、千川くんが声をかけてきた。
「今日もいかない?その…彼氏さんが怒らないなら…」
千川くんはそう付け足すと、苦笑いした。
『……うん、行こう!』
考えてたって始まらない。
「よかった、外で待ってて」
『うん』
千川くんはニコッと笑って走って行った。
そんなに急がなくてもいいのに。


『……へぇー!そうなんだ』
「うん、もう課長ったらおかしくって」
バーで今日も何気ない会話を楽しむ。
「そうそう、今日さ、福岡くんにやっと話しかけれたんだ」
『え?』
途端にまた重い話しに変わる。
「それがさ、福岡くん、僕のこと知ってたんだ」
『そうなんだ』
「うん、大学のときからよく目で追ってたからかな」
『え…』
ちょっと確信染みてきた。
もしかして千川くん、本当にそっちの人?
『あ…あの…さ』
「え?」
千川くんは本当にニコニコしていた。
思考が一瞬で停止する。
聞いちゃだめだ。
『なんでもない』


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