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終わりの合図と見知らぬ唄と
【青春 恋愛小説】

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『忘れ難き時間と知った歌と 後編』-3

出した。
全てを出し切った。
スポーツなんかで全力を出したら、きっとこんな脱力感なのだろう。私なんかではわからないけど。
私は言葉を待っていた。
辛いけれど、聞かなきゃならない、そんな気がした夜だった。 やがて彼は口を開いた。

「僕は…一人じゃない。 少なくとも一人ではない。僕の周りには友達がいる。かけがえのない友がいる。 シンゴに千秋に…それに柳サン。僕は一人なんかじゃないんだ」
予想していた言葉とは逆の、しかし明確な答えを彼は出していた。
だが、彼の答えはまだ続く
「そう、僕は孤独の中をあるいてきた訳じゃない。 そういう意味では柳サンとは別の世界の住人なんだろうけど、あながち柳サンの指摘は間違ってはいない」
深い湖の底の様な、暗く悲しい瞳の奥。
「…僕は黒の世界の住人だ。今までも、今でも、これからも。 ずっとずっと未来でも。」
よどんだ黒と鳴かない猫の眼。
「僕は君を救い出せたけど、君には僕は救い出せない。 この無色無音の世界には…自分から入ったんだから」
悲痛をもらす貧しき住人。 私はこの眼を晴らさなければならない。
「でも…! なんで!?そこは…暗くて…寒くて…苦しくて… 希望なんか思い出せなくて… 抜け出したいとは思わないの!?」
「君にはわからないさ。 入口に立っただけの君には。 過去を振り返れば闇に沈むなんて経験、ないだろ?」
昔になにかあったのだろう。 とてつもなく痛みをもたらす何かが。 でもそれは正さなくてならない。
夢みる事を忘れた人は、ウソをつきつつ前を向いた。
「そんなの…!」
「偽善だよ。それは。 僕はこの闇からはでられない」
「そんな事ない!! 私は…私には光が見えた! その光はくすんでるけど、しっかり私を照らしてくれた! 照らす事ができるあなたに! 抜け出せないなんて事、絶対ない!!」





涙が止まらなかった。
悔しいとか悲しいとか嬉しいとか、そんなんじゃない。 ただ涙が止まらなかったんだ。
僕の為に泣く少女。
彼女は僕がすくい上げた。 心にキズをつけていて、包帯さえもない状態から。
そんな彼女が泣いている。 僕の為にだけに泣いている。 胸の辺りが締め付けられた。
急に世界が色付いた。
黒一片だったこの世界に、潤う眼の先から色を持った。
さらに彼女はこう言った。

「私が本当に笑って泣ける様な、地図にもない場所へ… あなたは私をそこに連れてってくれた。 夢の住人だった友達というものの所へ、あなたは私を連れ出してくれた」
僕の好きなあの曲の、愛しい歌詞が鳴り響く。風の音すらなかった世界が、堰を切った様に演奏を始めた。
「過去になにがあったかなんて…私にはわからないよ…。けど、けど! 私は今!あなたを見てる。 うつろな世界であなたを見てる! 私は一人じゃなくなった。あなたも一人なんかじゃない! その世界は辛いの、知ってるんだから… だから…!」
やめてくれ! 僕は…僕は!!


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