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壁に鍵穴
【コメディ その他小説】

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壁に鍵穴・前編-2

とりあえず、この部屋を仲介した不動産屋へ問い合わせる事にする。
別に管理人さんに直接連絡しても良かったのだが、全く初対面の管理人さんに連絡をとるよりは、一度会って話をした事のある不動産屋さんの方が何となく都合が良かったから。
ポケットから携帯を取り出して、つい最近登録したばかりの不動産屋さんの番号を呼び出す。
そして発信ボタンを押し、それを耳に当てると「プップップッ……」と鳴る無機質な電子音を耳の奥で受け止めた。
しばらく鳴り続ける電子音。
その間に、どの様に鍵穴について尋ねたら良いか思案する。
壁にある鍵穴の事……
始めに何に使う物なのかを訊くか、それとも何で壁に鍵穴があるのかを訊くべきか。
どうせだったら「なるほど」と頷ける様な理由であってほしい。
「ただのインテリアでした」みたいな、つまらない結末はごめんだ。
耳元では相変わらず「プップップッ」と音が鳴り続いている、と突然その音は途切れ、途切れたその刹那に「プーッ、プーッ、プーッ」という音に変わった。

繋がらない?

携帯を耳から離して画面を見ると、アンテナのマークの横にある筈の「棒」が一本も無い。
そしてそれは部屋の窓を開けて身を乗り出してみても、画面の中に現れる事は無かった。
僕は用に足らない携帯を見つめ「部屋も変えたし、次はお前か?」と意地悪く呟いてみる。
しかし、当然返答はなく微かな虚しさだけがそこに残った。


それから数分後……
電話による解決を諦めた僕は、一階にある筈の管理人さんの部屋を訪ねる事にした。
ここまで積極的に行動する事は、普段の僕にとっては有り得ないのだが、どうも例の鍵穴の事を解決しなければ気が済まない。
ここに住む手続きは、全て不動産屋さんを通して進めてしまったので、管理人さんに会うのは初めてになる訳だが、その初対面の緊張でさえ乗り越えるだけの価値が今の僕の行動にはあると思うのだ。


この2階建てのアパートには部屋が6つあって、一階と二階共に3つずつの部屋がある。
管理人さんの部屋は一階の右端にあり、アパートの玄関にもかかわらず、玄関のドアには少し洒落た表札が掲げられていた。
僕は、ドアが開かれた直後の言葉を探しながら、そっと呼び鈴のボタンに指をかざして、それを押す。
同時にドアの向こう側で微かに響く「ピンポーン」という音。
それに対する反応は…… 無い。
その状況は再びボタンを押しても変わる事がなく、結局「管理人は留守」という答えをもたらしただけだった。

不動産屋さんに連絡もとれず、管理人さんも不在……
故に謎の鍵穴に関しては、何も解決への糸口が掴めない。
だからといって諦めようにも諦めきれない僕は、部屋に戻るや否や壁の鍵穴を軽く叩いたり、覗きこんだりしてみる。
いっその事、例の鍵を差しこんでみようかとも考えたが、何かマズイ事になるといけないのでそれは止めた。

やはり何をするにしても、誰かに訊いてからの方がいい……

そう考えた僕は、次にその「誰か」について考える。

そして、すぐに出た答えは「隣の住人」


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