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10年越しの約束
【初恋 恋愛小説】

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10年越しの自覚-2

暫く続いている沈黙に痺を切らしたのか、松田君が諦めた様に口を開く。私の頭の上で…
「まぁ、いっか。あんまり俺達の邪魔しないでね!宮木さん、あっち行こうか!」
やっと頭が解放されて、その手が今度は私の背中を押す。
「あっ、う、うん…」
私は促されながらも、光輝君の方をチラッと伺った。

(なんで…そんな顔するの?)
見た瞬間に、ドキッとした。心臓を掴まれた様な…そんな感じ。
私に向けられているのは、寂しそうな眼差し…まるで、桜の下で再会したあの日の様な……
(どうして?)

「宮木さん、聞いてる?」
「う、うん。」
松田君が、私に不審そうな視線を向けている。
物凄く申し訳ないんだけど、本当は全然聞いていなかった。
『ちゃんと聞かないと』とは思っていても、松田君の話が右から左へと抜けて行く。
胸がなんだかザワついて、話を聞いているフリをしながら、ずっと光輝君の事を考えてしまっていたの。
(私ってば…どうしちゃったんだろう……)
「ごめん…今日はもう帰るね。」
なんだかいたたまれなくて、私は席を立った。これ以上松田君と一緒に居ても、松田君に失礼なだけだから…
後ろから『送る』という松田君の言葉が聞こえたけど、私は無視してそのまま教室を後にした。


(なんで…あんな顔したの?)
夕暮れの通学路…どうしても光輝君のあの顔が気になって、モヤモヤして仕方ない。
ぼーっと考えながら歩いていたら、いつの間にかあの公園にやって来ていた。
(あれ…こんな所まで来ちゃった……)
歩きながら辺りをキョロキョロ見回して、自分の場所を確認する。
そうしている内に、私の足は自然とあの桜の方へと向いていた。

夕陽に染まる青い若葉…遅咲きだったあの桜の花もすっかり散って、今はもう元気な葉が広がっている。
それなのに…見た瞬間、あの日に戻った様な気がした。
桜の下…あの日と同じ様に、光輝君がそこに立っていたから……

「光輝君っ!」
私の声に、光輝君がハッとした様にこちらを向く。
「……聖?なんで…ここに?」
「光輝君こそ…」
「俺は…この木が見たくなって……」
そう言って光輝君は、また桜の木を見上げた。やっぱり寂しそうな瞳をして…

そのまま視線を動かさずに、光輝君はボソッと言った。
「博也と…付き合ってんの?」
(え?松田君と…私が?)
「付き合ってなんか無いよ?どうしてそんなコト訊くの?」
「噂に…なってるから……」
(……噂?)
「そうなの?どうして?」
私は光輝君の前に回り込んで顔を覗いた。でも、光輝君の視線は桜へと向けられたまま…私の方を見ようとしない。

「聖が…博也とばっかり一緒に居るから……」
「委員会の仕事をしてただけだよ?」
「……それだけ?」
「う、うん。それだけ。」
光輝君の口から私をからかう言葉が出ないと、正直どうしたら良いか分からない。
いつもと違う光輝君の様子に、少し戸惑ってしまう。
そして、光輝君は小さく『そっか…』と呟いたきり、今度は黙り込んでしまった。

(何か…有ったのかなぁ?)
光輝君の顔を見たままで、ふと思う。
(なんで急に、私と松田君が付き合ってるのかなんて………そう見えてるの?)
私は今まで松田君と一緒に居て、周りにどう見えてるのかなんて考えた事が無かったの。そんな噂、耳にした事が無かったから…
(すっごい勘違い!ただ仕事で一緒に居ただけなのにっ!)


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