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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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目の前のきみ-3

それぞれ解散した後、瞬と悦乃は帰り道を来た時と同じように車で走っていた。
『………悦乃』
「はっ、話かけないでよ!」
『……大丈夫だよ、信号は点滅してるし、車通りもほとんど無いんだから』
悦乃は運転免許を取得して、まだそれほど経っていないのだ。
「………大事な話?」
『………少し』
「………」
悦乃は暗い顔をしながら、ハザードランプを点け、車を道路の脇に付けた。
「………なに?」
『………体調はどうだ?』
「へ?どうって…変わらず元気だけど」
『……今日は楽しかったか?』
「もう、なに!?」
めずらしくはっきりと言わない瞬。
『………俺はさ、お前と一緒にいたいわけで……』
「?」
『俺ら…初めて会ったのが小学生で……大学でなんつうか、運命的な再会してよ…』
「瞬、体調悪いの?言ってることわけわかんないよ?」
瞬は気まずそうな顔をする。
『………だからよ、だから……そろそろ一緒になろう』
「………」
悦乃はそんなこと言われるなど、微塵も思わなかった。
『びっくりさせたか?まだいいんだ、もう少し落ち着いてからで…』
「………それって……プロポーズ?」
『………まあ』
「バカバカ!」
悦乃は瞬の胸をポカポカと叩いた。
『あ?』
「なにが少しよ!もう最重要じゃない!」
『………そうだな』
瞬が苦笑いすると、悦乃は真面目な顔になった。
「………ちゃんと言って」
『……結婚しよう』
「………」
『………ちゃんと用意してる』
そう言うと、瞬はスーツのポケットから箱を取り出し、ゆっくりと開いた。
「…………指輪?」
『…………指輪』
「………バカ」
『今度はなんだよ』
「………かっこよすぎ」
『なんだそれ』
「………私でいいの?」
『………いやならいい』
「ちがっ!バカぁー!」
悦乃は瞬から指輪を取り上げた。
瞬はその姿に見兼ねて、ため息をつく。
『………つけてやるよ』
「………」
悦乃は涙を必死で堪えながら、左手を差し出す。
瞬はやさしく微笑みながら手をとり、すっと指輪を薬指に入れた。
白くて細い指に、キラキラと光るプラチナのリング。
それをじっと見つめる悦乃。
『……涙溢れてる』
「………」
瞬は悦乃の涙を手で拭う。
『………泣くなよ』
「泣くよ!」
また悦乃はポカッと瞬を叩く。
『……悦乃』
「なに?」
『返事は?』
瞬がそう言うと、悦乃はさらに、かあっと顔を赤くする。
「………いいの?」
『?』
「私で…」
『何回きいてんだよ』
悦乃は数秒目を閉じ、指輪をきゅっと握った。
「……いいよ、してあげる」
『なんだそれ』
瞬はふうと息をつくと、また微笑んで悦乃の頭を撫でた。


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