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『最強男女』
【学園物 恋愛小説】

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『最強男女』―第三章―-2

「はい、そこまで」
声がし、そちらに目を向けると、いつもの笑顔を浮かべた績の姿があった。
「出たな……変質者め」
「ダ〜リンをつかまえて変質者はないだろう?」
「誰がダ〜リンじゃっ!?」
騒ぐ斎を余所に、績は笑顔のまま少女達に歩み寄る。
「僕の為にこんな事を?」
「え、えぇっ、そうですのよっ! この方のせいで績様がお困りなのではと思っ……」
「お前等は、大きなお世話って言葉を知らないのか?」
笑顔が消えた訳ではないが、目と声は笑っていなかった。
「誰がこんな事を頼んだ? 余計な事をするな。そっちの方が迷惑だ」
少女達の顔色が変わっていく。
「次こんな事をしたら、分かってるな? 俺は女だからと容赦はしない。行け」
少女達は去って行く。その一瞬だが、斎は見逃さなかった。リーダーらしき生徒が、睨み付けた後、ニヤリと笑った事を。
「悪かったな。迷惑を掛けた」
「本当に。あんたといると、ろくな事がないよ」
斎は悪態を吐く。
「ははは、まぁ、そう言うなよ」
笑う績を見て、斎は口を開いた。
「何で、あたしなの?」
「ん? 何がだ?」
「好きってやつ」
斎は目を逸らす事なく答えた。績はそんな斎の目をまっすぐ見つめて言った。
「……一目惚れ、じゃないわけじゃない」
「顔かよ」
「まぁ、それが最初ではある。けど、それよりも俺が本気で気持ち持ってかれたのは、初めて声掛けた日だ」
斎は首を傾げた。
あの日、そんな要素があったとは考えられないからだ。
「お前の目に、ヤられたんだよ。射抜くような目に」
まだ納得が行かない様子の斎は眉を顰めた。
「変な奴」
「そうかもな」
苦笑した績に、斎は軽く笑って見せた。
「何?」
斎に績は少し近付く。怪訝そうな顔をした斎に、績は嬉しそうに言う。
「やっと笑った。笑えるんじゃねぇか」
「人間なんだから当たり前じゃんか。あたしを何だと思ってんのさ? それに、あんたがいらん事しなきゃ、ちゃんと笑うよ」
ブツブツと言っている斎の目の前が暗くなる。
「……っ……」
斎の大きな目がより大きく開かれる。また唇に、昼と同じ感触を感じた。
「それは約束出来ないな」
呆気に取られた斎の拳が握られた。


――ボコッ、バキッ!


痛々しい音と共に、績の身体が崩れた。
「一度ならず、二度までも……この最低の変態男っ! あたしに一生近付くなっ!」
斎は眉を吊り上げて叫ぶ。そして背を向けて去って行った。
残された績は、最後の一撃が一番効いたらしく、暫くの間、股の間辺りを押さえたまま、動けずにいたのだった。


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