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恋する日々
【学園物 恋愛小説】

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恋する日々〜消えぬライラックと生い茂るノコギリソウ〜前編-7

「誠君は少し味付けの濃い唐揚げが好きなの、頑張ってね」
「…!!な、ななな!!わ、わ、私はその、あの!!」
予想もしなかった沙雪の言葉に驚き、顔を真っ赤にする。余程驚いたのかお椀を落としそうになる。
「ふふふっ、ここの子供達はね皆家族なの。潤一も凛も、風香も五月も…皆私の兄弟なの。誠君は頼りになる一番大きい弟君ね」
「弟君…ですか」
「だから安心してね?」
沙雪は今のあやなの心境をすべて見抜いていた。だから自分が誠に対してどのような想いを抱いているのかを嘘偽りなく言葉にした。
「……はい」
あやなは沙雪がどのようにしてここの子供達の面倒を見きれていたのかがわかった気がしていた。一見頼りなさそうに見えるが実際はしっかりとしていて会ってまだ少しのあやなの心を理解してしまう大きな心の持ち主なのだ。
「はい、神那君」
他の子供達とは違う大きな丼を誠に渡す。
「おっ、サンキュー獅堂」
「…ねぇ神那君?」
「んぁっ?」
「沙雪さんって凄いね」
誠の生い立ちを沙雪から聞いた時からあやなは誠とこれからどう接すればいいのか戸惑っていた。知られたくない事を自分に打ち明けてくれた事、沙雪の誠への想い、真正面からぶつけてきた気持ちに応える為にあやなは今できる最高の笑顔をした。誠はその笑顔に一瞬見とれ顔を赤くするがあやなに負けないくらいの笑顔で返した。
「そりゃそうさ、俺の自慢の姉さんだからな」
ここに来てよかった、あやなは心からそう思えた。


時は流れて7月。ついに覇王祭が開催された。雲一つなく絶好の体育祭日和である。空にはいくつもの花火が打ち上げられていた。
『儂が言える事はただ一つ…!!闘え若者よ!!!!』
「「「「「うぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」
源一郎の短いが魂がこもった言葉に男子生徒は歓声をあげる。
「くぅぅぅ!!燃えてきたぁぁぁ!!」
「気持ちはわからんでもないが落ち着け工藤。俺達の目的は壱組の奴等を叩きのめすことだ」
「わかってるって!誠、気合いの言葉でもくれ!」
「よし、皆円陣を組め」
誠に言われるとクラスメートは大きな円陣を組む。誠は円陣には入らず円の中心に立つ。
「この覇王祭、厳しい闘いになるが…俺はこのメンバーなら勝てると信じてる!傷だらけになっても絶対に帰ってこい!一人十殺!死して屍拾う者なし!行くぞぉぉぉ!!」
「「「「うぉぉぉっ!!」」」」
「矛盾だらけだね」
「ヤクザさんの出入りみたいだね」
「十殺って…」
「でも楽しそう」
女性陣のささやかな激励の言葉を受け覇王祭が始まった。


第壱種目50m走
「なんで米俵(30kg)を担ぐんだよ!?」
覇王祭は競技種目は普通の体育祭と同じものもあるが少しばかり工夫がされている。ただの競技では漢らしさに欠ける、とは源一郎の言葉である。
「ちっくしょぉぉぉ!!こうなりゃヤケだ!!」
辛くも信太は一着でゴールした。
「よくやったぞ信太!」
「最初っから…こんな…んじゃ…もたねぇ…ぞ…」


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