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恋する日々
【学園物 恋愛小説】

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恋する日々〜消えぬライラックと生い茂るノコギリソウ〜前編-6

「ありゃ?工藤君に柳君、どうしたの?」
「昨日祖母から大量に果物が届いたのでな、ここにおすそ分けしに来た」
「んで、俺はその荷物持ちだ。そっちこそなんでここに?」
両手で抱えていたダンボールを見せる。中には梨、桃、スイカなどの果実が所狭しと入っていた。
「アタシ達はここでお料理の特訓。本当はあやちゃんの家でするつもりだったんだけどさ」
「ここで長々と立ち話もなんだ、中入れよ。飯、食ってくだろ?」
誠は服についた大量の砂や埃を掃いながら言った。
「そりゃありがたいが…いいのか?急なのに」
「ガラにもなく遠慮してんなよ。一人二人増えたとこで変わりゃしねぇよ。」
「そういう事ならばお邪魔しよう」


「それじゃあ皆、手を合わせて…」
なんの変哲も無い食事風景。だが、どこかピリピリとした緊張感が漂っていた。心なしか皆の表情が怖かった。
「いただきます」
「「「「いただきます!!」」」」
その言葉を待っていたかのように一斉に箸が並べられた料理へと伸びる。
「この唐揚げはもらったぁ!」
「たまごやきぃ!」
「そのウィンナーぼくのだぞ!」
そこには年齢、性別などは関係なかった。ただひたすら目の前の料理を獲得すべき争う餓鬼がいた。
「うわぁ…凄いねぇ」
「ぼーっとしてたらみんな無くなっちゃうよ」
馴れた様子の香織と礼は隙を見て料理を取り、誠、信太は子供達に混じり箸を動かしていた。
「はっはっはっ!!俺の箸捌きは世界一ぃぃぃ!!」
「あたたたたたっ!!」
謎の奇声を発しながら確実に標的を獲得していた。
「まことおにいちゃん、たまごやき…」
「ん?卵焼きか、ほらよ」
「ありがとー」
「あ〜ふーかずりい!まこ兄ぼくもウィンナーとってよ!」
「甘いぞ凛!お前はすでに男!真の男…漢になりたければこれしきの事でくじけるな!」
「スキあり誠!」
凛に喝を入れていた誠の皿からウィンナーを盗る潤一。
「なっ!?俺の飯を盗るとはいい度胸!そしてよく成長した!…って兄ちゃんをつけろ!」
「はぁ…言っても無駄だろうがもう少し静かに飯を食え」
しかし礼の言葉を聞く者は誰一人としていなかった。
「れいちゃん、はるまきとってー」
「ん…ほら」
「ありがとー」
この状況を諦めた礼は風香に春巻を取ってあげた。それを風香はおいしそうに頬張る。
「壮絶だね〜…アタシも混ぜてー!」
楽しそうに見えたのか理菜は目の前の争いへ嬉々として飛び込んでいった。
「はい、あやなちゃん」
呆然としていたあやなに料理を取り分けてやる沙雪。
「…あ、ありがとうございます。あの、いつもこうなんですか?」
「そうね…いつもはもう少し大人しいけど、やっぱり皆揃うとこれくらい賑やかになるわね」
「沙雪姉さんおかわり!」
「沙雪さん俺も頼みます!」
「ぼくも!」
「俺も!」
誠がおかわりを催促するとそれが合図のように一斉におかわりを催促する。
「はいはい」
「手伝います」
「ありがとうあやなちゃん」
皆からお椀を受け取り旅館などで見かけるような大きな炊飯ジャーからご飯をよそう。
「あやなちゃん」
ふいに沙雪があやなに声をかけてきた。
「なんですか?」
炊飯ジャーの熱気と慣れない作業により額から出た汗を拭いながら返事をする。


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