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恋する日々
【学園物 恋愛小説】

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恋する日々〜消えぬライラックと生い茂るノコギリソウ〜前編-5

「さてと…それじゃあ始めましょうか?」
買ってきた材料を並べエプロンをつけ料理を始める。建物の中は少し古い外見とは裏腹に隅々まで掃除が行き届いており綺麗そのものであった。大小それぞれの冷蔵庫と大量の食器から大所帯なのがわかる。
「〜〜♪」
沙雪は慣れた手つきで鼻歌を歌いながら、香織は黙々と、あやなと理菜はどこかぎこちない手つきで料理を始めた。沙雪は簡単な説明をし所々で手を加えていた。
「うわ〜…沙雪さん上手ですね。」
「ふふっ、いつもあの子達のご飯を作っているから」
「…えっと、あの、神那君はその…」
ふいにおずおずとあやなが尋ねる。聞きたいが少し言いづらい、そんな雰囲気を出していた。
「…誠もここの出だよ」
そんなあやなを察した香織が答える。
「…えぇ、小学生にあがってすぐにここに来て去年までいたの」
それに少し懐かしそうな顔をしながら沙雪が続ける。
「えっ…!?」
「最初は今では想像もつかないでしょうけど、凄く落ち込んでいて誰とも話そうともしなかったの。でもある日から他の子達の面倒を手伝ってくれて段々と元気になっていったの」
「………」
沙雪の言葉を黙って聞く二人。正確には言葉が出ず、黙るしかなかったのだ。
「いいのに無理をしてアルバイトしてお金を作ったり…色々とここの為に頑張ってくれたわ。ここを出る時も…」

『ここもあいつらでも少し狭くなってきたから、俺出て行くよ。近いとこに住むしちょくちょく顔出すから心配しないでよ』

「…って、誠君には本当に助けてもらってばかりなの」
「そう…だったんだ…」
「…ごめんなさい、その…」
「いいのよ、誠君がここに来いって言うのは心を開いている証拠なの。あなた達には聞く権利があるもの」
どこか悲しそうな、それでいて懐かしそうな顔をしていた沙雪は先程までの笑顔で二人に微笑む。
「さぁお料理を続けましょ?あの子達きっとお腹を空かせてるでしょうから」
「…はい」


「…これで、かんせ〜い!」
「ありがとうございました、沙雪さん。おかげで凄く勉強になりました」
ペコリとおじぎをしながら沙雪にお礼を言う。
「いいのよ、こっちも助けてもらったんだし」
「それじゃあ沙雪さんと並べてるからあやなと理菜は誠達呼んできてくれないかしら?」
「あっ…うん、わかった。行こ理菜ちゃん」
「うん!」
エプロンを外しあやなと理菜は外に出ていった。
「…いい子達ね」
二人がいなくなると沙雪がポツリと呟いた。
「私の友達ですから」
「ふふっそうね。…いいの?あやなちゃん、多分…」
「…いいんですよ。それより料理、並べましょう」
「…そうね」
それから二人は先程の会話がなかったかのようにいつも通りの態度で料理を並べた。


「お〜い!ごっはんだよ〜!手洗ってうがいしておいで〜!」
「「「「はーい!!」」」」
すぐに遊ぶのをやめ建物内へと入っていく。
「………」
子供達がいなくなった後にはボロボロになり物言わなくった誠だけが取り残された。
「…大丈夫?神那君?」
「…あいつらめ…手加減というものを知らんのか」
「おーおーまた派手にやられたもんだな」
声のする方へ振り向くとそこには信太と礼がいた。


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