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恋する日々
【学園物 恋愛小説】

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恋する日々〜消えぬライラックと生い茂るノコギリソウ〜前編-12

「げぇっ!!柴山副会長!?」
「あぁ〜…あの人も出てたとは」
「ふむ…残ったのはお前達か。時間も惜しい、早々に手合わせを願おう」
スッ…っと腰を落とし居合の型を構える。一見なんでもない様に見えるが実際に向き合っている二人はそれだけで凍牙からの殺意をビシビシ感じていた。
「……!信太、どうする?」
「どうするって?決まってるだろうよ」
「だよな…合図を出す。それで行くぞ」
声には出さず静かに頷く信太。冷や汗をかき、暴れていた心臓はもう落ち着いていた。信頼できる友人が隣にいるだけでどんな事もできる、そう思った誠は僅かに微笑む。
「………今だ!」
「しゃあっ!!」
誠が出した合図とともに誠は凍牙に向かい走り、信太は反対方向へと走っていった。
「ってうぉぉぉいっ!?二人でぶつかりに行くんじゃないのかよ!?」
予想外の出来事に足を止め後を振り向き叫ぶ誠。
「馬鹿か!!師範の息子だぞ!!化け物ジュニアだぞ!!真正面から行って勝てるかってんだ!!逃げるしかないだろが!!」
足を止めずに首だけを後に向け叫ぶ信太。
「てめぇそれでも漢か!?漢だったら力量の差なんて関係なく突っ込め!」
「うるせぇ!俺は一般人だ!お前等と一緒にすんな、バーカ!!」
「なっ!?誰が馬鹿だ!!赤点魔王が!!」
『おぉっと、これは仲間割れか?副会長を無視して口喧嘩が始まったぞ!』
遂には口喧嘩を始める二人。そこには先程まで誠が思っていた事は微塵にもなかった。
「コイツ等は………」
「大変だね、柳君」
「んだんだ」
近くで倒れていた三人は気がつき目の前の光景を見て呆れ、礼に同情をしていた。
その光景は少し離れた参組の応援席からもよく見えていた。
「また始まった…よく飽きないものだ」
「普段は二人共あんなに仲がいいのに…」
「神那君…工藤君…」
「内容もなんだか小学生みたいになってきたし、醜いっていうよりバカっぽいね」
理菜の言葉に三人は、うんうんと一斉に頷いた。
「………」
「バーカバーカバー…ってうぉっ!?」
それまで傍観していた凍牙がスッ…っと誠の前を通る。凍牙の表情は心なしか怒っているように感じられた。
「友を裏切り真っ向勝負に背を向け逃げだすとは…貴様はそれでも鳳凰学園の生徒かっ!!!!」
凍牙の言葉に空気がビリビリと振動する。凍牙は父、源一郎を尊敬の対象と見ているので源一郎の志と凍牙の志は同じものであった。故に、信太の行動は凍牙の思う漢に反するものであったので腹を立てたのであった。
「うっ…!やべぇ!」
本能で危険を察知した信太は全速力で逃げ出した。
「まだ逃げるか…ならば制裁あるのみ!!柴山流剣術奥義!!烈空閃!!」
バシュゥゥゥ!!
凍牙は武器を両手で持ち上から下へと振り下ろすと、剣先から白い斬撃が現れ信太に向かい一直線に飛んでいく。
「はぁっ…はぁっ…っぎゃぁぁ!」
ズガァァァン!!
『うぉぉぉっなんか出たぁぁぁっ!!そのまま工藤君に当たりくの字でふっ飛んだ!!今のは1年生度肝を抜かれたんじゃあないでしょうか、解説の士部さん?』
『まぁ当然でしょうね。副会長は学園長から教わったありとあらゆる武術の中でもっとも得意とするのが剣術でそれは学園長も認めている事。今のは人間が元々持っている力、気とかオーラって言えばわかると思います。それを剣先に集めて飛ばしたものだと思います。』
『成る程、さすが鳳凰学園なんでもありですね』
放送席から聞こえてきた言葉は全く耳に入らず、誠はただただ目の前で起こった出来事に呆然としているしかできなかった。信太は壁に叩きつけられ痙攣を起こしたがそれも止まりピクリとも動かなくなっていた。


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