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恋する日々
【学園物 恋愛小説】

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恋する日々〜消えぬライラックと生い茂るノコギリソウ〜前編-13

「…さて、神那だったか。どうする、降参をするなら受け入れるが?」
その言葉に我に返り凍牙と向き合い不敵に笑う。
「凍牙先輩、俺はどうせ同じ負けなら真正面からぶつかってから負けたいんだよね」
「…そうか、先程漢を口にした者にかける言葉ではなかったな。すまない」
誠の目、雰囲気から誠の何かを感じとった凍牙は謝罪をする。誠はそれを無言で受け取り構える。凍牙も同じく構える。二人の間にピリピリと空気が張り詰め周りも固唾を飲んで見守った。
「……はぁぁっ!!」
先に動いたのは誠だった。左手に持っていた武器を凍牙に投げ走る。相手は小細工がきかないので一撃に賭けたのだろう。右手に持っていた武器両手で持ち振り上げる。
「……ふっ!」
飛んできた武器を簡単に払い落とす。そこが誠の狙いだった。見た所、凍牙は居合の型。刀を納める動作に僅かな隙ができると見抜いた誠は右から左への横の攻撃をした。
「だぁぁぁっ!!」
決まった。
誰もがそう思った一撃だった。源一郎、そして誠と凍牙を除いて…。
「…いい一撃だった。だが、まだ私には届かん」
誠の攻撃が当たる瞬間、刀を縦にし両手を添え誠の攻撃を防いだのだ。
「くそ…イケたと思ったのにな」
悔しそうな言葉とは裏腹に誠は笑っていた。自分の出せる全部を出したから悔いが無い、そんな笑顔だった。
「ふっ…君の行為に私も全力で応えるとしよう。」
つられて凍牙も笑う。凍牙の笑顔を見て誠は似ていると思った。無愛想で不器用で誤解されがちだが、本当は心優しい親友に……。
表情を改め誠の武器を払う。思わずバンザイをする格好になる。刀を戻し再び居合の型をとり刀に力をこめる。
「柴山流剣術…秘奥義!!蒼天翔!!」
刀が地を這う様な動きをしたかと思うと、急に角度を変え浮き上がる。それをモロに喰らい誠は宙を舞う。
『決まったぁぁぁっ!!神那君が勝利を納めたと思えば何があったのか次の瞬間には立場が逆転!!神那が宙に舞ったぁ!!高さにして5、6m!!大丈夫なのか?!もう私には何が起こったのかはわからない!!』
『今のは副会長が咄嗟に持ち方を変え辛くも神那君の一撃を防いだ様子ですね。今の攻撃は速すぎてわかりませんでしたが…加減はしてるでしょう、副会長ですし』
『解説ありがとうございます。ですが私にはまださっぱりわかりません!ですが!一つだけわかっている事があります、それは、この競技の優勝者が、我らが生徒会副会長、柴山凍牙という事だけだぁぁぁっ!!!!』
その瞬間、静まり返っていた周りが一斉に歓声をあげる。勝利を喜ぶ者、健闘を讃える者様々であった。拍手は鳴り止まなかった。
「………」
凍牙は自分の僅かに痺れている右手をじっと見ていた。
片手で防げたはず、だが…
誠の予想以上の重い一撃、直前に受けたダメージ、それらが重なり思わず使わずにいた左手を使った。ちらっと横を見る。ふらふらとなりながらも自分の足で歩く者、完全に気を失いタンカで運ばれる者、双方ボロボロであったが間違いなく自分を驚かせた。そう思うと自然と笑みをこぼす凍牙であった。
『この後は出場生徒の手当てやらグラウンド整備やらがありますので準備が整うまで休憩とします。整い次第、次の協議を開始します』

「いやぁ、さすがに死ぬかと思ったわ…っつぅ!」
「動かないでくださいね」
競技が終わり休憩となった時間に気がついた誠は傷の手当てを受けていた。手足には無数の擦り傷ができ、体には武曽里の蹴りと凍牙の一撃でできた痣ができていた。
「…うん、礼はこれでよし」
「すまないな、美袋」
「それにしても…工藤君はカッコ悪かったね」
そう言うと未だ気絶している信太をちらっと見る理菜。
「この野郎そういえば逃げやがって…落書きでもしてやろうか?」
誠がペンを探そうとすると信太が勢いよく起き上がった。
「うわっ!?びっくりした…」
「気がついた、信太?」
「…あれ?俺なんでこんなとこに、それになんか体痛いし?おかしいな…さっきまで綺麗な花畑の近くの川でこれまた綺麗なお姉さんと話をしてたのに」
ポリポリと頭をかきながら周囲を見渡す。打ち所が悪かったのだろう信太は記憶が飛んでいた。


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