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詩を風にのせて
【ファンタジー 恋愛小説】

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詩を風にのせて 〜第2話 旅立ち〜-8

「早く、俺…がゾ……になる、前に…」
「ああ、わかったよ」
「サ、クラ…を頼む…」
レオは締め上げていたサクラを下ろす。
リーシャはレオのほうを向く。
「ユキがやるよりは私がやったほうが…」
リースはレオに近付く。そして剣を構える。
「待って!」
ふわふわとユキのほうからレオのほうへと飛んでいくものがあった。
「私がいることを忘れないで。まだ意識があるうちならなんとかできるから」
そう言ってエイミは呪文を唱える。
瞬く間にエイミの体を光が包み、続いてレオの体をも包んでいく。
「妖精…?」
リーシャが呟く。そしてエイミに鋭い視線を送る。
エイミの声が途切れるのと同じくして、光が辺りを包み込む。

ユキが気付いたときにはあれほどいたゾンビの群れはなくなり、レオの体も元に戻っていた。
辺りには、ユキの隣りにリーシャ、レオの横で倒れているサクラ、その上を飛んでいるエイミだけがいる。
ほんの1秒間の出来事だった。
それだけの短い時間に一体何が起こったのだろうか。
とりあえずユキはレオに駆け寄る。
「おい、レオ!しっかりしろ!」
「しばらくは目を覚まさないと思うわ。でもレオもサクラも大丈夫よ!」
エイミは笑顔で言う。
「良かった」
ユキは安堵の笑みを浮かべる。
「じゃあ、私は少しリーシャと話があるから二人をお願いね」
そう言ってエイミはリーシャのほうに飛んでいく。
「私はエイミ・リーシェル。妖精よ」
「私は、もう知ってると思いますが、リーシャ・クレセントです」
エイミとリーシャの間に緊張が走る。
「私を見てあまり驚かないのね」
「あの3人の中で治癒魔法を使える人はいませんから妖精か何かがいると考えるのが自然です。予想通りです」
リーシャは自信たっぷりの瞳をエイミに向けた。
「なら、端的に言うわ。貴女は何者?どうしてユキに近付いてきたの?」
「その質問に答える義務はありません。聞きたいのならまず自分のことを話したらどうですか?」
「私は、世界に異変が起こっているからその原因を調べてるの。偶然ユキたちと会ってね、ユキには協力してもらっているわ」
僅かながらの間があったがすぐにリーシャは答える。
「そうですか。ですが、貴女はまだ表面的なことしか話していませんよね?ならやはり私には自分のことを答える義務はありません」
「それならそれで構わないわ」
「私もこの旅に同行させていただけませんか?」
エイミは少し考えた。
「いいわ」
エイミもリーシャも笑みを浮かべていた。
この子、怖いわね。何を考えてるかわからない。ただ腕は立つ。ならうまいこと利用することを考えるのが得策ね。
エイミはこう考えていた。
それにしても、あれだけ多くのゾンビを一瞬で消したのは私ではない。となると、やっぱりリーシャが私の魔法に合わせて消したと考えるのが妥当ね。でもそれだけの魔力を持っているのに何一つリーシャから魔力が感じられない。一体どれほどの力を持っているの?


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