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詩を風にのせて
【ファンタジー 恋愛小説】

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詩を風にのせて 〜第2話 旅立ち〜-9

同時にリーシャも考えを巡らせていた。
おかしい。見たところ治癒方面に関してはそれなりの知識をこの妖精は持っている。きっと昨夜ゾンビからの傷を治したのも妖精の仕業だろう。
では、何故?傷口にゾンビの体液が触れるとその者までゾンビになってしまうことも知っているはず。
レオは切り付けられた。何故その時にそれ相応の対応をしなかった?
絶対裏がある。でもそれが何かはまだわからない。

リーシャたちはユキのところに戻った。
「エイミ…良かったのか?リーシャの前に姿を現して…」
「ええ。共に旅していればいずれリーシャにわかってしまうことだから」
ユキの質問にエイミは答えた。
「そっか」
「それにレオを助けることができたのは私しかいないし」
「そういえば光っていたときに一体何が起こったんだ?レオは元に戻ってるしゾンビは消えてるし」
「全部私の魔法よ」
にっこりとエイミは言った。
どういうつもり?エイミは私がゾンビを消したとわかっているはず。なのに嘘をついた。
リーシャはエイミの心理を探ろうと二人の会話を注意深く聞いている。
「それじゃ、そろそろ二人が意識を取り戻すと思うから私は戻るわ」
そう言ってエイミはふっと消えた。
「ってことは、リーシャは俺たちと旅をするってことだよな?」
「ええ、そうよ」
沈黙が訪れる。
ユキは何かを思い出したように言う。
「リーシャ、聞いていいか?どうしてお前はレオが切られたってわかったんだ?」
「傷口からゾンビの体液が体の内部に入った場合、その人間はゾンビになる。ゾンビに切られたら適切な治療を施さないとすぐゾンビになるわ。普通の人間では感じられないものがレオにはあったから」
「そうだったのか…。ってことはリーシャはレオがゾンビになるってわかってたってことだよな?じゃあなんでその時治療しなかったんだよ?!」
ユキはリーシャに詰め寄った。
「特別な薬が必要なの。この街では売ってなかった。結果的にゾンビにならなかったのだからいいじゃない」
「それはエイミがいたからだろ?」
「エイミがいなかったらレオを助ける術なんてないのだから諦めることね。そんな甘い気持ちなら旅なんてできないわ」
リーシャはその話題を終わらせた。
これ以上話すとなるとエイミに対する疑問も話さなくてはならないと思ったからだ。
今ユキにあの疑問を話すわけにはいかない。これ以上エイミの警戒心を強くしたくはないし。
ユキは尚も不満そうな顔を浮かべている。
「私を責めるより自分の力のなさを呪いなさい」
「は?」
「もともとはユキの力が足りなかったから、レオもサクラだけでなく自分も守れなかったからこんなことになったのよ」
「なんだよ、それ?!」
ユキは怒りを顕にする。
「まだわからないの?村の人やエイミが助けてくれなかったら貴方たちの命はなかったのよ。貴方がもっと強ければこんなことにはなってない」
「あんなたくさんのゾンビを一度に倒せる人がいるのかよ?いるわけがない!」
ユキは反発した。
「いるわ。もっと世界を見たほうがいい」
これ以上ユキは反発できなかった。
「貴方より強い人なんて山のようにいるの」
ユキは何も返せない。
険悪な空気が漂っている。
「ん…」
サクラが目を覚ます。
「サクラ、大丈夫か?」
「ええ…。レオは?!レオはどうなったの?!」
サクラは慌てて起き上がりりを見回した。
「レオは無事だ。ゾンビも倒したし」
「あ、本当だ。あんなにいたゾンビがいない」
サクラはほっと胸を撫で下ろす。
「ユキ、そろそろ街に戻りましょう」
リーシャが促した。
「ああ。レオは俺がおぶっていくよ」
そして街へと歩き出した。


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