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『半透明の同居人』
【悲恋 恋愛小説】

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『ルイのネックレス〜半透明の同居人より〜』-1

僕が小学校くらいまで、近所に駄菓子屋と呼ばれるものが学校の下校途中に二件ほどあったものだ。もうその駄菓子屋は今ではコンビニになってしまったけれど、僕が実家に帰ってそのコンビニに行くとその駄菓子屋の在りし日の姿を思い出す。

 十五年以上前。僕が小学校へ上がって間もない頃。僕の一ヶ月の小遣いが二百円だった。その二百円を遣り繰りして、駄菓子屋で買い物をすることがとても楽しみだった。
 ある日の日曜日。僕はシンヤと一緒に、近所の駄菓子屋へ買い物に出かけた。
 その駄菓子屋では五十円で一回くじが引ける。ほとんどは五等のガムなのだが、僕は一回だけ三等のチョコレートを当てたことがある。でも、僕が欲しいのはそんなものではなくて、一等の飛行機のプラモデルだった。プラモデルと言っても、所詮は駄菓子屋の景品なので、パーツがかなり少ない安価なものであったが。小遣いが二百円の僕にとって、それは手が届かない高級品だったし、喉から手が出るほど欲しい代物であった。
 「俺は今日こそ当てるぜ」
 シンヤは百円玉を握り締めて、隣で鼻息荒く自転車をこいでいる。
 「シンちゃんさ。もしかして、その百円全部くじに使っちゃう気?」
 「そうさ!こんどこそ、プラモを当てるんだ」
 そう意気込むシンヤではあるが、一回も五等以上の品物を当てたことない。最近では、このくじ五等しかないんじゃないかと駄菓子屋のおばあちゃん店主に詰め寄っていたけど、店主は実に飄々
とシンヤの言葉をかわすだけだった。それでも、一時期インチキだと言って、くじから遠のいていたシンヤであったが、僕が三等を当ててからというもの、もしかしたら自分もと思ったらしく、最近はまたくじに自分の小遣いを投資している。
 近所の駄菓子屋は自転車で五分もかからないような近い場所にあった。駄菓子屋の佇まいは今で言うと風情がある古いものだったが、当時の僕らにはただのぼろい建物でしかなかった。駄菓子屋の店先には?ガシャポン?と呼ばれる百円を入れてハンドルを回すとプラスチックのカプセルに入ったおもちゃが出てくる機械があったが、僕らにとって、それは高嶺の花だった。
 「こんにちはー」
 僕とシンヤは開けるのに随分力が要る、引き戸を開けて中に入った。古い家の匂いがするその店内だが、僕らにパラダイスに見えた。五円から二十円で菓子が買えるのだから。
 「おばちゃん!くじ二回ね!」
 そう言って、シンヤは他の駄菓子に目もくれずまっすぐと五十円くじに向った。
 「はい。じゃあ、二回引いていいよ。」
 シンヤ、浅い箱からまず、一枚目のくじを引いた。所謂三角くじと言われるように、2等編纂角形のような形をしたその紙をシンヤは恐る恐るめくった。
 「またかよ!おばちゃん、本当にプラモあんのかよ!」
 「ハイ。ガムね」
 おばちゃんはシンヤの言葉を無視するように、五等のガムを取り出した。
 「ちぇ。・・・・。もしかしたら、俺にはくじ運がないのかも・・・」
 少し、考えるとシンヤは不意に僕の方を向いた。
 「リク!お前が俺の変わりに引いてくれ!」
 「えっ。なんで?」
 いきなりの言葉に僕は戸惑った。
 「三等のチョコレートを当てたリクはくじ運が俺よりはいいはず。なあ、頼むよ」
 僕は迷った。もし、五等だったらっと言う責任もあるし、仮にプラモデルを引いたところで複雑な気持ちになるからだ。
 「いいけど・・・五等当たっても文句言わないでね」
 「わかってるって」
 わかってると言ってはいるが、シンヤは期待している顔をしている。僕はおばちゃんが差し出す箱の一番隅にあるくじを引いた。それを、ゆっくり開く。はじめに等と言う文字が見えた。さらにめくると下のほうが縦に一本の数字。この時点で四等か一等しかない。
 「おっ!やったか」
 シンヤは興奮していたが僕はいささか冷静だった。縦に一本であるが、それは明らかに四のであるからだ。全てめくると案の定、四等だった。


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