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微笑みは月達を蝕みながら
【ファンタジー 官能小説】

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微笑みは月達を蝕みながら―第弐章―-3

「…何スか?」
「白とは仲良く出来そう?」
 げほげほげほげほ。
「何スか急に」
 ものすっごくわざとらしく咳払いしながら、夕は逆に尋ねた。なんというか、どうしても先ほどのことを思い出してしまう。
「顔真っ赤だけど、大丈夫?」
 問いを一切無視して、逆に尋ねてきた。とことんマイペースなヒトである。
「いや、ちょっとむせただけなんで」
 なんかこちらのペースが狂ってくる。夕は少しだけレンを見た。
 綺麗だと、率直に思う。完璧な美貌、とはこんな顔の女性のことを言うのだろう。穏やかで優しげな笑顔が実に印象的だ。声も涼やかで軽やかで、耳に柔らかく響く。
 外見はこの上なく完璧なのに、何故だろう。夕は彼女に“女性”を意識することはなかった。
「白はね…あの子は今、臆病になってるから。ちょっと心配なの」
 胸の中のもやもやは消え、レンの言葉に神経がいく。思っていたことはあった。見た目はショートの髪にくりくりした目と人形めいた可愛さを持っているが、
「なんか、ちょっと……暗いっつったら悪いけど、なんつーか、…暗いッスね」
 自らの表現力のなさに若干絶望しつつ、それでも何とか目で「でも悪い印象ではないんです!!」と訴えかけた。
 あまりの必死さに、苦笑されてしまった。うわ、滅茶苦茶恥ずかしい。
「あの子はいい子よ。だけど、ね。あの子は予想外の出来事に弱いの」
「予想外?」
「アドリブが苦手なのね。自分の感情を表に出す事がないから、表向きは分かりにくいのだけど」
「はあ」
「だからね、誰かが後押ししてあげないと。ずっと閉じこもったままじゃ、不健康でしょう?」
「まあ、そうかもしれないッスね」
 詳細は分からないが、なんかあったんだろうと納得しておくことにする。夕はそこまで好事家ではないので、それ以上聞くことはしなかった。
「レンさんって優しいんスね」
 少し虚を突かれたのか、キョトンとした。そこで初めて夕は気付く――このヒト、微笑んでばっかだな。
「だって、あの子と私は」

 ピンポーン

 唐突に、インターホンが聞こえてきた。控え目だが、夜中の為かよく響く。
「――誰かしら? こんな時間に」
「白じゃないッスか?」
「あの子なら鍵を持ってるはずだから……ごめんなさい、ちょっと待っててくれる?」
 レンが部屋を出て行くと、急に満腹感が眠気と変わった。先ほども眠っていたはずだが、枕が替わったためか(それほどデリケートでもないはずだが)あまりすっきりしていない。
「さっきの夢が…」
 なんとなく、気になった。


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