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微笑みは月達を蝕みながら
【ファンタジー 官能小説】

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微笑みは月達を蝕みながら―第弐章―-12

「やっぱりぃ、まだ若いと思いますよぉ?」
少し嫌味な口調も、早紀にとっては普通のこと。淡々と汚れを拭き取り、言葉を掛けない司郎に対しては何も期待していない。
愛のない、単なる性欲処理作業。けれども早紀の性欲は一言で言えば異常で、それは一回の絶頂ぐらいでは収まらない。
「ねぇ……もぅ一回、どぉです?」
腕を司郎に絡めながら誘ってみるが、
「やめとくよ」
つれない返事が返ってきただけだった。
「君を満足させるには、僕は役者不足みたいだ」
それは事実で、だから早紀は別に男が何人もいる。司郎は黙認していた。もとより二人には愛はない。
「うふん? まあ、いいけどぉ。早紀も仕事あるし」
気怠げに髪をかきあげながら、今後の予定を頭の中で立てていく。
多少前倒しになるかもしれない。不安要素は準備が出来るかどうか。
「なるようになるしかないね」
思考を読んだのか、司郎は呟く。
「僕は傍観者だから。君達の好きなようにすればいいよ。その為の支援はきちんとするからね」
早紀はその言葉に唇が触れそうなほど顔を近付けて、
「そぅいうの、早紀嫌ぁい」
嫌悪を、叩きつけた。
司郎はどこ吹く風で飄々としている。
「これからホントに大変。大変タイヘン」
一瞬後にはニヤニヤ笑いに戻る。早紀も司郎もお互いに本心は決して言わない。
「これからどうするんだい?」
だから、簡潔に。
「明日辺り、吸血鬼の館に☆」
事前事後に拘らず、報告のみ。



外は風が出てきた。
 嵐の予感がする。


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