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記憶のきみ
【青春 恋愛小説】

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記憶のきみ8-1

「灰慈くん…お願いがあるの」
葵は瞳を潤ませ目の前で手を合わせる。
「な…なんやねん」
「うちと……」
葵の瞳は近付いてくる。




「………あ?」
微かにチャイムのような音が耳に入る。波がひいていくように生徒が出ていき、それに伴いざわつく講堂。



講堂?

やべ、また講義中に寝ちまったんや。本当、最近多いねんな。
いや、それよかいかんことがあんねんやろ。
なんやあの夢。もろ罪悪感の塊や。
「あー…………俺のアホ」

もう一度、机に顔をべったりとつける。
いかん、また睡魔が……

「……くん」
「……んあ?」
「……慈くん」
「……葵ちゃん?」
「灰慈くん!ほら!出ないと」
灰慈が目を開けると、葵は荷物を整理してくれている。
葵ちゃんってあんなキャラなのに意外と家庭的なんだよな。
ぼんやりとそんなことを考えながら、灰慈も慌てて荷物を片付ける。
「あ、ああ、ありがとう葵ちゃん、前のほうにおったんやな」
「うん、灰慈くんに気がつかなかったよ」
「俺はいっつも最後尾やもんな」
「うん、でも寝ちゃだめだよ」
「あいよ」
曖昧な返事をしながら講堂を出て二人で歩く。
「……瞬くんと青空くんはいないの?」
「…みたいやね」
「そっかぁ、由貴ちんとえっちゃんもいないんだよね」
「マジで?じゃあたまには二人で飯行かん?」
灰慈は色めきながら言う。
しかし葵は笑顔で即答した。
「…ごめん、これから合コンなんだ」
「は?」
「じゃあまたね♪」
手を振りながら、葵は小走りに駆けていった。
「合コン……?」



「なんやねん、合コンて」
翌日、灰慈は由貴と講義が重なったので、空き時間に話してみることにした。
「葵はよく合コンに行ってるわよ」
意外な事実。
なんだかその言葉に苛立ちと焦りを感じる。
「………俺ら三人じゃあかんのかね」
ちょっとふてくされてみる。
「……そんなことないわ。葵は三人をすごく気に入ってるわよ」
「……でも他の男でもええんやろ」
灰慈がとことんふてくされた態度をとると、由貴は少し考える素振りを見せた。
「………」
「………葵ね、幸せにならないといけないんだって」
その言葉を聞いた途端、なんだか笑いがこみ上げてきた。
「……っはは、なんやそれ」
「ふふ、それが笑い事じゃないのよ」
「……?」
「理由は知らないわ。でもね、複雑な顔でそう言ってたの」
「……そか」
「……じゃあ今日は用事あるし帰るから。ほな、またな」
「……はい?」
由貴はケラケラ笑うとすぐに見えなくなった。
「……誰の真似や?」


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