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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜転生花・返り咲き〜-6

その後、パーティーも終わりが近付いてきた頃に舞台の上に人が集まりました。
最後を飾る演奏会です。
時間の関係で一曲しか出来ませんが、軽やかなメロディの曲です。
『あ〜、うん、ゲップ、皆注目〜』
指揮棒を持って舞台に上がったゼロさんが奏者に声をかけました。
ちょっと口にソースがついている以外はとても様になっています。指揮棒が振られ、演奏が始まります。
会場の皆さんを魅了するほどの音色に私もつい聴き入ってしまいました。
すると、紅様が席を立ち上がりました。
『シャナ、一緒に踊ってくれないかな?』
『はい、喜んで。』
にこやかに差し出された手を取り、二人で会場の真ん中に向かいます。

タンタタタ、タンタン、タンタンタタタン―――
私と紅様の、軽快なステップが演奏に合わせて響きます。
(ワンツ、ワンツ、スリーフォー、ここでターン………)
私の場合、実際に軽快なのは足音だけです。 頭はかなり鈍重です………
数回誤ってしまうこともありましたが、ふと周りを見ると皆さんペアを見付けて踊っていました。
(アルネさんとキシンさん、上手いです。)
私の踊りの先生でもあるアルネは流石に。
キシンさんもそんなアルネさんに遅れない位お上手でした。
紅様は皆さんが楽しんでいることを見てから踊るのを止めました。
『ごめん、まだテンポが早い曲は踊りにくかったね。』
私が数回誤ったことを気遣ってくれたようです。
『はい、まだちょっと………でも次の機会までに覚えます。』
『楽しみにしているよ。
 ところでパーティーは楽しいかい?』
席に戻り、ワインを一口飲んだ後に紅様が尋ねてきました。
もちろん私は楽しいと答えました。
『じゃあこれからはたくさんパーティーを開こう。』
私が楽しいと言うと紅様はそう言いました。
『でも、お金がかかってしまいます。 準備も大変ですし。』
『お金なら大丈夫だよ、シャナが楽しんでくれるならいくらでもね。』
紅様の言葉は嬉しかったです。 しかし。
『紅様、私は紅様が居てくれるだけで幸せです。
お金はもっと違う所に使って下さい。』
というよりも、紅様がこんなことを言うのは初めてです。
物より想い、いつもはそういうお方なのに豪華なパーティーを毎日とは。
『そう………シャナがそういうならそうしよう。』
ちょっと哀しげな表情。
紅様の顔は哀しげでした。
『紅様、何かあったのですか?』
『ん、いや、なんでもない。
………強いていうならちょっと疲れただけ。』
連日パーティーばかりでしたから。
でも体と共に心も疲れているような感じです。
『紅様………』
『おや? どうやら演奏が終わったようだね。』
紅様に言われてみると、演奏が終わっています。

ここで紅様が皆さんにパーティーの終わりを告げ、全員がお帰りになるのを見送りました。

『あぁ、楽しかったな♪ アルネ。』
『………なんで貴方は残っているのよ?』
キシンさんは残っていましたけど。
玄関ホールでアルネさんと向き合い、話しています。
『いやさ、俺はウェザの馬車で来たじゃん。
今から徒歩で帰るのも嫌だし、今日は泊めて貰って明日帰ろうと思っているわけさ。』
『………では、客室の用意をしますので。』
確かに、アルネさんの口から溜め息が漏れました。
『いや、そのさ………』
『な・に・か?』
アルネさんの表情は怒りを隠した笑顔でした。
『………今夜は一緒に寝ないか?』
『………この、馬鹿!』
怒りの一喝の後でアルネさんはスタスタと廊下を歩いて行ってしまいました。


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