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紅館の花達
【ファンタジー 官能小説】

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紅館の花達〜転生花・返り咲き〜-1

初月 中の日 天候 晴れ
紅館 厨房


『はいなー! ローストチキン、下拵え完了やでぇ!』
料理長のフィルさんがいつになく真剣になっている今日、厨房は大忙し。
様々な御馳走を作らなくてはいけないので皆さん大変なのです。
何故なら本日はおめでたい日、紅様のお誕生日です。
それを祝って今夜はパーティーが開かれるのです。
『シャナはん、どないな感じ?』
『もうちょっとです!』
今、私は紅様のためのケーキを作っている。 シンプルな苺のショートケーキを。
でもフィルさん達がこんなに忙しく働いている時に私がケーキを作っているのはちょっと迷惑かもしれません。
かと言ってケーキを適当に作るわけにもいかないし………
そんなこんなで悩みつつも手はちゃんと動かしていますけど。
やがて完成した生地を型に流し込み、オーブンに入れて焼き始める。
あとは焼き上がるのを待つばかりなので手早く使った物を片付けて厨房から出ることにしました。
『フィルさん、お邪魔しました。 ありがとうございます!』
『はいな♪ あとは任しとき♪』
額に汗をかきながら働くコック姿のフィルさんは、まさに働く女性です。
そんなフィルさんの邪魔にならないように私はさっさと厨房を出ました。


厨房を出た食堂でも皆さん飾り付けの真っ最中でした。
リボンや花飾りが壁に、テーブルには綺麗なクロスがかけられて美味しい料理が並べられるのを待っています。
そして、その飾り付けはアルネさんが指揮をとっていました。
『アルネさん、何かお手伝いすることはありませんか?』
私が問うとアルネさんは笑いながら手を振った。 何もない、大丈夫。 という意味だった。
アルネさんも忙しいのだろう。
どうにも、ここでも私は邪魔になってしまいそうなので移動をしなくてはならないようだ。
あと向かえる所は広間ぐらいだろうか。
食堂を出て広間に向かう。

廊下を歩いていると辺りは賑やかになっていた。
今日は本当にお祭りなのだ。
紅様は今年で526歳。
………最初にその年齢を聞いた時には仰天してしまいました。
紅様が不老とは聞いてましたけど、今の若々しい顔で500歳以上と言われてもピンと来ませんよね………
今紅様は新年のお祝いで開かれているお城のパーティーにお出掛けしています。 私も誘われましたが、ケーキを作るために遠慮しました。
大公爵という地位なのでパーティーの御誘いが多いのだそうです。 最近は毎日夜遅くになってから紅館に帰ってきて、すぐに眠ってしまいます。
今日はなんとか夕方までにはお帰りになると約束して頂けましたので、安心ですけど。


やがて広間に近付くと綺麗な音楽が聞こえてきました。 丁度パーティーの催し物の一つ、オーケストラの練習をしているのでしょう。
オーケストラと言っても、楽器を弾ける方が多くないので各楽器につき一人づつという小規模なものです。
でも、皆さんお上手ですからとても綺麗な演奏となっています。

広間に入ると此方ではゼロさんが一番忙しそうに駆け回っていました。
『ちょっとちょっと! そこ違うよ! フォルテだよ、フォルテ!』
意外なことですが、ゼロさんは音楽に精通しているそうです。
今回は指揮者ですが以前一度だけバイオリンを弾いているのを聞きました。
綺麗な音色だったのを覚えています。
入ってきた私に気付かない位の真剣さなので、私は黙って椅子に座り、演奏を聞いていることにしました。
実は私、ちょっと眠いのです。
毎日夜遅くに帰ってくる紅様を待ってから寝るので、私も結構寝不足だったのです。
綺麗なバイオリンの音色を聞いているうちにウトウトしてしまい、しばらくの間眠ってしまいました。


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