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いつかの紙ヒコーキ
【純愛 恋愛小説】

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いつかの紙ヒコーキ-4

翌日

いつものように俺は、昼飯を食いに学校の屋上に向かった。
ここには人が来ないし、風が気持ち良くて落ち着けた。

屋上のコンクリートに座り、弁当箱を開ける。
と、同時に屋上の扉が開く音がした。

人が来ないといっても全く来ないわけじゃない、たまには違うクラスや学年の奴が来たりもするので、この時もそうだと思った。
俺は「うっとおしいな」なんて思いながら弁当を食い始める。
すると扉を開けた奴が俺の目の前まで歩いてきた。
視線を上げる俺
するとそこには時枝優里がいた。
「時枝、何でここに?」
「さっき吉田君が屋上に上がってくのが見えたから」
「え?」
「昨日はありがと」
少し照れ臭そうに笑う時枝優里、彼女の笑顔なんて初めて見た気がする。
「靴とか制服とか濡れちゃって大丈夫だった?」
「ああ、予備あったしな」
「そっか・・・・・吉田君はいつもここに来てるの?」
「ああ、昼休みは大抵ここに来てる」
俺がそう言い終わると、時枝は俺の隣に座った。
「屋上なんて初めて来たけど、すごい気持ちいいんだね」
そう言いながら空を見上げる時枝優里の髪が風に揺られて、すごくきれいに見えた。
「そう言えば時枝は進学しないのか?」
俺の言葉に不思議そうな顔をする時枝優里。

「いやほら、何ヵ月か前くらいに進路希望を提出しただろ?俺が最後だと思ってたら先生が後は時枝だけだって言ってたからさ、迷ってたのかなって思って」
「私両親がいないから・・・伯母さん夫婦の家にお世話になってるんだ。だから大学には行かないで就職しようと思う。」
「そっか」
俺は馬鹿だ、昨日時枝優里の両親がいないって知ってた筈なのに
「じゃあ私行くね」
傷つけたかな
「ここの風景きれいだね、また・・・ここに来てもいい?」

だけど、俺の心配を余所に時枝優里は笑顔で聞いた。「ああ」

意外だった、あんなに人と接するのを避けていたように思えた時枝優里がそんなことを言うなんて。
そしてもっと時枝優里と話していたいと感じてた俺自身に。

もしかしたら俺も時枝優里も、人を避けながら、人と距離を置きながら、誰かと触れ合いたかったのかもしれない。

そして時枝優里は扉から去っていった。


俺はポケットに入っていた、折ってある紙飛行機を広げる。
そして屋上の柵から投げた。

紙飛行機はフワフワと校庭の端まで飛んでいった。
十月

あれから一ヵ月が過ぎた。
時枝は、昼休みよく屋上に来るようになった。
ここからの景色が気に入ったんだろうか・・・それとも

教室では何となく周りの目が気になるのかあまり喋らないけど、ここでは色々な事を話した。

進路での不安、これから先のこと、学校での楽しかったこと。
他愛もないことばかりだけど、俺は心のどこかで安らぎを得ていた。

「時枝はもう就職決まったんだっけ?」
「うん、近くの会社の事務職に」
「へえ、すげえじゃん」
「ありがとう。吉田君は?」
「俺はまだ」
「でもまだまだ日にちはあるしね」
「そうだな」
今日も何気ない話をして終わるはずだった。でも今日の俺は、ずっと喉から出かかってた言葉を口にしてしまった。


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