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いつかの紙ヒコーキ
【純愛 恋愛小説】

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いつかの紙ヒコーキ-3

自分から「人」に近づくことなんてしないと思ってたのに、この時は何故か、自ら時枝優里の所に行ってしまった。

川辺の土手まで下りる俺。
「よう、どうした?」
俺がそう尋ねるとびっくりしたように顔を上げる時枝優里。
「吉田・・・君?」
そして俺の名を呼ぶ。
「えと、捜し物?」
「う、うん」
時枝優里のその目は、少し涙目だった。
「大事な物?」
そりゃそうだろ、日の沈みかけに人目もふらずにこんなことしてんだから。
でも条件反射で聞いてしまった。
すると時枝優里は静かに頷いた。
それを見て俺は、靴も靴下も脱がずに川に入る。
時枝優里はそんな俺を見て、驚いたような、誰かに手を差し伸べられてホッとしたような、そんな顔をした。
「・・・あの」
「で、何探してんの?」
「えと、お守り、赤いお守りなんだけど」
「お守り?そんなの流れてっちゃったんじゃ」
「ううん、お守りって言っても中身は石だから」

話によると、この道を歩いているときに強い風が吹いて、バッグに結んであったお守りが転がって川に落ちてしまったらしい。
話から、落ちてる筈の場所はここら辺で間違いない。
でも中々見つからず、遂に日が沈んでしまった。
真っ暗な闇の中、電灯の明かりと手探りを頼りにお守りを探すがやはり見つからない。
「ありがとう吉田君、もういいよ、後は私一人で探すから」
時枝優里は俺を気遣って帰るよう促す、でもこのままじゃ俺もなんとなく気持ち悪いから、もう少し探すことにした。
「あー無いな」
俺は川の土手に手を突いて座り込む。
すると手に何か固い感触がした。
それを掴んで顔の近くまで持ってくる。
「あった」
それは時枝優里の言うお守りだった。
「え!?」
「ほら」
「あぁ・・・よかった。ありがとう吉田君・・・でも何でこんな所に」
時枝優里は安堵の表情を浮かべながら言った。
「うーん、勢いよく転がってったから川に落ちたと勘違いしてたんだろ?実際はその枝に引っ掛かってたみたいだから」
俺がそう言うと、時枝優里は顔を真っ赤にして頭を下げた。
「ごめんなさい、私がちゃんと確認しなかったから、吉田君に迷惑かけちゃって」
「別にいいって、よっぽどテンパってたんだろ?そんなに大事なもんなのそれ?」
「・・・・・死んだ、父さんと母さんの形見なんだ」
ああそうか、俺が時枝優里を見過ごせなかったのは、時枝優里に何となく自分と同じ心の闇を感じたからなんだ。


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