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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-50

「こんちはッス!」
 夕方を間近に控えた蓬莱亭に、景気のいい声が響いた。二度目の開店に向けて、床を磨いていた龍介が、暖簾を内側に戻してあるはずの出入り口を見やる。
「おう、雄太」
 “準備中”の掛札がしてあるにも関わらず扉を開けて中を窺ってくるのだから、それが近しい人間の来訪だと予測していた龍介は、案の定、そこによく知った顔を見つけ、そして破顔した。
「どないした? まだ準備中やのに」
 いつもは昼の1時か、夜の7時にやってくるのが常である。
「しかも、ひとりか?」
 そして、朴訥な顔には似つかわしくないほど綺麗な彼女を連れてくるのも、いつものことであるが……。
「こんにちは」
「おっと……やっぱ、品子ちゃんもおったな」
 雄太に続くようにして、眩しい笑顔を散りばめた、快活な雰囲気を身に纏った少女も入ってきた。長い髪をいわゆるポニーテールに束ねているが、それもまた彼女の闊達さを表している気がする。
「ごめんなさい、お仕事中なのに」
 それだけではない。楚々としたその立居振舞が聡明さに溢れていて、まさに“麗人”の素質を持った、心身ともに美しい少女であった。
「あらかた終わったところやさかい、大丈夫や」
 龍介は、とりあえずカウンターの席を勧めた。水を三人分用意してから自分も腰を下ろし、しばらくの“ティータイム”としゃれ込むことにした。ちなみに、由梨はお昼寝中である。龍介は、自分以上の激務が夕方から控えている妻を、この時間帯はとにかく休ませることにしていた。故に、店内の清掃と仕込みのチェックは彼の仕事だ。それらは既に終わっているから、龍介も今は自分の時間を過ごす余裕があった。
「俺たち、2部リーグで優勝したんスよ!」
「ほう!」
 早速とばかりに雄太が、自分が景気の良い理由を龍介に話す。それを訊いた龍介もまた、身を乗り出すようにして話に乗ってきた。何処となく似通った体格と雰囲気を持っている二人だ。さらに、野球を無二の趣味としているところまで重なっているのだから、その相性の良さは並ではない。
「野球部できたばっかりやのに、もう優勝したんか! すごいやないか!!」
 雄太が通っている“双葉大学”には軟式野球部があり、その野球部が、龍介にとっては思い入れのある“隼リーグ”の2部に所属していることは知っていた。しかも、メンバーを集めてその野球部を立ち上げたのが目の前にいる屋久杉雄太であり、それが昨年の話だから、なんと、創部二年目のチームが早くも2部リーグを制したということになる。
「明後日、入れ替え戦をやるんスよ。それに勝ったら……」
 大学軟式野球界の最高峰と称される“隼リーグ”の1部入り。リーグの創設から二十年近くになるが、2部のチームが1部に昇格した歴史は未だになく、雄太のいる双葉大学軟式野球部がそれを果たしたとすれば、それは“快挙”となるだろう。
「すごいのう」
 チームを立ち上げ、自らがそれを率いて、さらに2部リーグで早くも優勝を収めた雄太のバイタリティに、龍介は舌を巻いた。多少、ノリが軽いところもあるが、そのリーダーシップは瞠目するばかりだ。
「俺も、こんなに早く1部リーグを視野に入れられるとは思ってなかったけど……岡崎もいたし、品子もいたから」
 チーム結成に大きく尽力してくれた同僚と、それを裏から支えてくれている恋人の名を口にする雄太。思いがけず名前を呼ばれ、雄太と龍介のやり取りを楽しげに眺めていた品子は、満たされた表情で雄太の方を見ていた。
「今度の試合でも頑張って、もっと凄い世界をみんなに見せてやりますよ!」
 2部リーグと1部リーグは、同じ隼リーグといっても大きく違う面がある。なにしろ、その試合を行う場所は、1部リーグのように城央市営球場ではなく、各大学のグラウンドを使っているのだ。そういう意味では、公式の試合とはいえ草野球の範疇を出ない面がある。
 やはり野球の試合は、正式な球場でやりたいものだ。メディアにも注目されるようになった隼リーグだが、その視線は1部に集中していることもあり、その中に加わることが出来れば、これまで以上の興奮を得られるに違いない。


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