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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-40

「でも、凄いよな」
「………」
「俺も甲子園で試合をしたことがあるんだが、あんなに遠くの外野席までホームランを打つなんて、とてもじゃないけど無理だと思ったよ」
「原田さんも、甲子園に出たことがあるんですか?」
「高校野球のときじゃないけれどね」
「?」
 話が要領を得ない大和。原田はその辺りを、簡潔に話した。
「隼リーグ……」
 大学軟式野球界では“最高峰”とまで謳われているリーグ戦だ。プロ野球選手を輩出したこともあり、このところメディアもその試合を取り上げることが当たり前のようになっている。当然その存在は、大和も知っていた。
「俺と新村と赤木は、同じチームで、京子くんは別の大学で投手をしていた」
「そう、だったんですか……」
「もう知っているとは思うが、京子くんの旦那さんが千葉ロッツの管弦楽選手で、彼もやはり隼リーグで戦っていた男なんだよ」
「………」
 大学野球といえば、明治神宮野球場を舞台に行われる関東六大学野球リーグが最も名のあるところだが、軟式球界でも活発な大会は開かれているものだ。
「なかなか面白いリーグ戦だよ。その大学に所属さえしていれば、女性でも、留学生でも、社会人学生だって参加しても構わないんだ」
 性別、国籍、年齢などの垣根が完全に存在しないという、それが隼リーグの醍醐味である。
「西の“猛虎リーグ”の優勝大学と、東西決定戦を甲子園でやるようになってからは、盛り上がりもすごくなったからね」
「そうですか、それで……」
「うん。だから、“甲子園に出たこと”があったんだ」
 もっともその時は、後輩に凄い奴らがいたおかげで、自分は邪魔にならないようにするのが精一杯だったんだけど、と原田は苦笑した。
「さて、桜子ちゃんの機嫌が悪くならないうちに、草薙君を返さないとな」
「原田さぁん」
 いい加減、桜子は疲れてきた。その様子が可笑しくて、大和は吹き出してしまう。
「ご、ごめんね。みんな、なんか誤解したまんまで……」
「ううん、大丈夫」
 感情をあまり表に出さない彼にしては珍しく、大和は笑顔のまま烏龍茶を口に運ぶ。
「別に、構わないから」
「えっ……」
 瞬間、桜子の時間が止まった。
「あ、いや……その、誤解されても気にならないっていうか……」
 大和も自分の発言が、彼女に誤解を与えることをすぐに自覚したらしい。慌てたように言葉を並べ、その誤解を解きにかかる。
 だが、桜子の動きは固まったままだ。
「嬉しいから」
「!?」
 は、と大和は言葉を留める。
“自分のボーイフレンドだって誤解されたままで、迷惑じゃない?”という桜子の気がかりに対し、“相手が蓬莱さんみたいな人なら、誤解されてもそれはそれで、むしろ嬉しいぐらいだよ”と言うつもりだったのだが、肝心な部分をかなり省略した言い方になってしまった。
「………」
 案の定、桜子の顔は茹で上がった蟹の甲羅のように赤くなっている。
(どうしようか)
 大和はこの誤解をどう解くべきか、いろいろと考えをめぐらせていたが、そんな桜子の顔を見やるうちに、赤く火照ったその頬が、とても可愛いものに思えてきた。
(あー)
 まずい、と思った頃には遅かった。自分の気持ちが、まるで磁石を寄せられた金属のように、桜子に惹きよせられていくのを自覚する大和。理屈では捉えきれない感情の揺れが、たちまちにして彼を支配していった。
「なんや、なんや! ラブラブビームを出しよってからに!!」
 ばすん、と背中に圧力が乗る。既に出来上がっている龍介だ。アルコールの匂いが、身体中から発せられている。
「それにしても、草薙君も水臭いのう」
「は、はい?」
「桜子と付き合うようになったんなら、早いうちに顔見せて欲しかったワイ」
「は、はぁ…」
 以前なら、積極的に否定にかかった桜子が、困った表情を見せている。


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