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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-252

「よっしゃ! みんな、もう一回晶さんに挑戦するぞ!」
「応!」
 フリー打撃の形を取って、晶との再戦に臨まんとするメンバーたち。現行の打順に従ってそれは行われるのだが、1番打者の岡崎は既にヘルメットを用意して、打席を前に素振りをしていた。寡黙に闘志を燃やす彼は、晶に対するリベンジを切に望んでいた人物だろう。
「ちょっといいかな」
「はい?」
 三塁の守備位置に入ろうとしていた大和。しかし、それを呼び止めたのは、亮だった。
「エレナ、お願いがあるんだが」
「? キドさん、どうしました?」
「俺は、草薙君の投球をもう少し見てみたいんだ。あと、桜子ちゃんにも、ちょっとアドバイスをしたい」
(あたしも?)
 自分にも話が及んできたので、桜子も足を止めていた。
「二人とも君のチームの選手だから、差し出がましいとは思うんだけど……」
「いえいえ〜。むしろ、願ったりかなったりでございます」
 指導者としての経験と実績は、亮の方が豊かである。それに、投手と捕手の経験がない自分では、どうしても目が行き届かない二人の改善点が、彼にはよく見えているはずだ。まだまだ潜在力のあるバッテリーを託すには、これ以上ない相手である。
「それでは、サクラとヤマトはキドさんのコーチングを受けてください。キドさん、遠慮はいりませんので、ビシバシお願いしますね」
「ありがとう。それじゃあ、二人ともよろしく頼む」
「はい。こちらこそ」
「お願いします」
 こうして、大和と桜子は別メニューでの練習となった。
「兄貴」
 ふと、三人になった頃を見計らって、亮の傍に誰かが寄ってきた。航君である。いつの間にか着替えを済ませ、涼しげな半袖のシャツ姿に変わっていた。
「俺も、帰るよ」
 それを、伝えたかったらしい。
「航、今日はありがとうな」
「うん、いいよ。いい気晴らしにも、なったからさ」
「そうか」
「それじゃあ。失礼します」
 その航君だが、どうやらここまで自転車でやってきたらしく、着替えや用具を入れたバッグを背負うと、颯爽とグラウンドから去っていった。最後に、桜子と大和に会釈と一言を忘れなかったのは、体育会系の人間らしい。
「“兄貴”って……あのコ、亮さんの弟さんですか?」
「うん。ああ、桜子ちゃんも初めてだったかもしれないな。“航(わたる)”って言ってね、下にいる双子の弟のひとりだよ」
「双子?」
「うん。もうひとりは、“翔(かける)”って言うんだが」
「えっ! 木戸 翔!?」
桜子は身を乗り出すような反応をした。なぜならその名前は、よく聞き知ったものだったからだ。
「静岡サンパルスの“ワンダーボーイ”でしょ! 確か、ワールドユースの試合でもゴールを決めてましたよね! …同姓同名じゃ、ないですよね?」
「ああ。本人だよ」
「うわぁ」
遠い世界の住人だと思っていた名前が、思いがけない身近なところで浮上した。その出来事に少し興奮して、桜子は亮に詰め寄る。
「“木戸”って、割とある苗字だから気にしてなかったけど…。亮さんの弟だったんですかぁ」
「あ、ああ。リトルにいたこともあったんだけど、中学からはサッカーに熱中してたよ。暇さえあれば、ボールを蹴ってたな」
「そうだったんですかぁ」
 蓬莱亭には顔を出したことがないので、桜子は知らなかった。上に、“務”という名の、料理人をしているお兄さんがいるとは聞いていたが、下にも双子の兄弟がいて、そのうちの一人がプロのサッカーリーグで脚光を浴びている“木戸 翔”だったとは……。
「あの」
 興奮気味の桜子を置いて、大和は自分の関心を冷静に、亮にぶつけてみた。


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