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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-251

「NICE GAME! …といいたいところですが、出来としては89点ぐらいですね」
 これまで常に90点代を下回らなかったエレナの採点としては、1点の差とはいえ、これはかなり低い。それだけ、反省するべき点が多いのだろう。
「今日のKEYPOINTは、ずばり、“SPIRITS”です」
 にこやかに、まるで講義を始めるような調子でエレナは、今日の試合に見るチームの反省点を口にし始めた。
「今日対戦したアキラさんは、とてもいいピッチャーですね。キャッチャーのキドさんとも、息ぴったりで、とってもSPECIALな相手でございました」
 それは、メンバーたちも痛感していることである。ブロック戦では圧勝ばかりが続き、また、最近の練習試合でも無難に勝ちを拾っていたので、これほどまでに“手強さ”と感じる相手は久しぶりであった。
「おふたりのHIGHな気分に乗せられて、途中からはすっかり早打ちになっておりましたよ」
「………」
 耳が痛いのは、雄太である。テンポもよくストライクを投げ込んでくる晶のリズムに乗せられるように、落ち着いてカウントを整理することもなく、難しい球に手を出して凡退を繰り返していた。わかっているのに、手が出てしまったのは、相手のリードにはまりこんでしまったからだろう。
「SPECIALな相手になれば、持っている力をFULLに出し切らないと勝てません。今日のみなさんにもっと必要だったのは、“FHIGTING SPIRITS”ですね」
 晶の球種がストレートとチェンジアップであることは、春に一度対戦したのでわかっていたはずである。にもかかわらず、狙い球を絞れないまま、なんとはなしに打ち取られた今日の自分を、岡崎は反省していた。指摘されたように、相手の勢いに呑まれるばかりで、立ち向かう気持ちが薄くなってしまっていた。
「タマシイをふりしぼって、いっぱい考えごとをしないといけませんので、とっても疲れてしまうものです。どうですか、みなさん? 今日は、疲れましたか?」
 それぐらい、ひとつひとつのプレイを懸命に行ってきたかどうか。問いの中にはなくとも、エレナの言葉にはその意味が込められている。
「これからはSPECIALな相手ばかりになります。そして、ひとつとして負けることの出来ないGAMEが続きます」
 ブロック戦を勝ち抜いたチーム同士で行われるトーナメント。いわば、“真の2部リーグ戦”は間もなく開始になる。当然だが、トーナメント形式で行われる試合だから、敗北はそのまま脱落を意味するのだ。
「Do your best! 最後に“勝ち”と“負け”を分けるのは、どんなときでも、自分のできることをやりきる、とても強い“SPIRITS”なのですよ」
 たとえ、“ENJOY BASEBALL!”をスローガンとしていても、エレナには勝利を求める貪欲な姿勢がある。それを失ってしまえば、野球を楽しむ心は惰性の中で色褪せて、いつか消えてしまうと知っているからだ。
「それでは今日は、これでおしまいです」
 最後までにこやかに、それでいて厳しさを含んだ彼女の総括は終わった。
「監督」
「Yes、なんでしょう」
「まだ正午まで、結構時間あるんで…。練習続けても、いいですか?」
「Sure!」
 雄太の申し出に、彼女は嬉々とした笑顔を見せた。
「じゃあ、あたし打撃投手やるわ」
「えっ?」
「実戦形式で、もうひと勝負といこうじゃないの」
「うへぇ。元気ありますねぇ」
 9イニングを投げきった疲労も感じさせず、晶は張り切った様子である。それもそのはずで、双葉大の面々が早打ちになっていたことも重なり、晶の投球数は百を数えていない。まだまだ、スタミナは残っている様子だ。
「いいでしょう。今度こそ、コテンパンに打ってやりますよ!」
「ふふ。そうこなくっちゃ」
 無安打に封じられたことで植え付けられた苦手意識を、エレナの言う“SPIRITS”を奮わせて振り払い、雄太はその申し出を受けていた。


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