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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-204

(確か、晶さんの旦那さんだっていう話だけど。お目にかかるのは初めてだな)
 晶とは、蓬莱亭で顔を合せた時に桜子も交えて何度か話をしていたので、“晶さん”と呼ぶほどに親しくさせてもらっている。“亮”という名前の旦那さんがいることは、彼女の口から何度も出てくるノロケ話で聞き知っていた。
(でも…)
 晶にとっては絶対的な存在である“亮”という人物が、野球ではどれほどの実力者なのか…。当然だが、大和は知る由もない。“隼リーグ”で達成した偉業の三連覇も、当時中学生だった彼には遠い話である。
「プレイ!」
 主審である栄輔の腕があがる。刹那、グラウンドに静けさが訪れた。
「………」
 練習試合とは思えないほどの緊張感…。打席に入り、構えを取るだけでそんな空気を生み出した亮の存在感は、大和の目にも脅威に映った。
 これといった特徴のない、スタンダードな構えではあるが、バットの先からつま先まで、図太い神経の筋が見えてきそうなほど安定している。どっしりとした根が大地に張っているような雄渾さだ。
(この人は、並のバッターじゃない)
 かつて甲子園で戦った、並み居る強豪校のスラッガーたちと遜色のない雰囲気が彼にはあった。スラッガーたちの中では、プロ入りした選手もいるわけだから、大和のデータベースになかったこの“亮”という選手は、それと同等の印象を彼に与えたのである。
 少々、話を脱線するが…。
 大和が知らなかった“木戸 亮”という名前であるが、その名は軟式球界では広く知れ渡っている。
 軟式野球リーグ戦の最高峰といわれるまでの盛り上がりを見せるようになった“隼リーグ”において、強肩・強打・堅守の捕手としてチームの中心となり三連覇を達成したことが、鮮烈な記憶を関係者に刻み付けたからだ。個人でも、二年連続の首位打者と最多打点の二冠に輝いており、リーグ出身者で初のプロ野球選手となった“管弦楽幸次郎”の名前と並んで、“殿堂選手”ともいうべき記録をされている。
 実のところ、ドラフトで初めて指名を受けたのは亮である。軟式球界から指名を受けた異色の選手であったため、全国誌である有名なスポーツ新聞でも特集記事が組まれ、そのことで彼は時の人にもなった。
 ところが、である。
 球児ならば誰もが憧れ、夢見るはずのプロの世界からの勧誘を、彼は断った。 目指していたものは、自らがプロの野球選手になることではなく、その世界を目指す子供たちの夢を育むことだったからだ。金と打算に塗れた社会の中にあって、そんな彼の姿はとても高潔なものに映ったであろう。下位の指名とはいえ、契約金と年棒は数百万にもなり、大卒の新人としては破格の給料を手に出来るところだったのだから…。
 しかし、“二度とないチャンス”と言われようが、彼は己の信念を貫く道を選んだ。苦学の末に中学校の教員となって現在に至る。もちろん、野球部の監督を務めている。その手腕はなかなかのものだ。
 彼が赴任するまでの城南中学校野球部は、初戦を勝つことさえも奇跡といわれたチームであった。それが、わずか数年の期間で、県大会でも上位に進出してくるのが当たり前と言われるほどになっていた。野球だけでなく、審判や他の高校の監督・コーチにきちんとした挨拶をし、進んでグラウンド整備を手伝うその素行の良さでも、彼の指揮するチームは高い評価を受けている。
 ちなみに教育者になってからも、彼は選手として野球を続けていた。
 軟式野球において全国的な知名度があるのは、全県の代表が一堂に会する“国民体育大会(国体)”や“天皇杯”である。そのときは、必ず県の代表選手の一人として声がかかり、プロのスカウトにも認められた実力を発揮していた。昨年開催の“沖縄めんそーれ国体”でも、地元開催という絶大な優位性を持っていた沖縄代表を破り、見事にチームを優勝に導いたのである。その大会で、最高打率と最多打点の二冠を獲得した彼は、当然ながら特別優秀選手として表彰された。


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