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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『SWING UP!!』(第1話〜第6話)-134

「お、おじゃましまーす……」
 桜子が大和の部屋にやってくるのは、実は初めてである。ちなみに、心と体を繋げた日からひと月近くが経過しているが、桜子は“二度目”を経験していない。
 大和としては、まずは桜子に、野球に専念してもらいたい気持ちがあった。
 桜子にとっては、初めての公式戦となる第1試合だ。打つ方でも、守る方でも、いろいろ考えることが多すぎたためか、彼女から気持ちの余裕を感じることができなかった。それを、男の願望によってさらに掻き乱すことは、当然だが大和は本意としない。
 では、桜子のほうはどうだったかと言うと…。
 いかに気持ちに余裕がないとは言え、もしも大和に望まれたとすれば桜子は迷いなく全てを彼に預けていただろう。躊躇っていたのは、女の子の方から誘いをかけることで大和がその“いやらしさ”に呆れてしまうのではないかと懸念したからだ。
 いうなれば互いの気の廻しすぎが、恋人としてのふれあいから二人をしばらく遠ざけることになったと言える。
 あの日以来、大和は敢えて蓬莱亭に泊まることをしなかった。それは、桜子が自分だけの時間の中で、気持ちを落ち着かせられるように配慮したからだ。いくら恋人同士になったからといって、その辺りの節度を失うことを大和は避けたかった。しかし、蓬莱亭まで彼女を送った後、ひとときの別れを惜しむように、唇による深い触れあいは絶対に忘れなかった。そこは大和も、男の業を隠せなかった。
 大和の優しい気遣いは桜子を感動させたが、同時にその配慮が余りに手厚くて、“初めて”を経たことで興奮気味だった気持ちが落ち着いた彼女は、途端に不安を覚えた。自分を大事にしてくれるのはとても嬉しいが、いつのまにか彼の気持ちは何処かに消えてしまうのではないかと…。
 二人が想いを告げあい、体を繋げあったのは、ほとんど“勢い”と言っても良い。だから、その勢いが冷めて、実は自分を抱いたことに後悔を覚えて、彼は蓬莱亭に泊まることをせず、二度目を求めてこなくなったのではないかと桜子は不安になり、たまらなくなって大和に問うていた。
『ははっ。そんなことはないよ』
 瞬間、意外な顔つきをされ、そして苦笑を浮かべた大和に優しく手を握り締められると、
『僕は、心の底から桜子さんのことが好きだ。だから、大事にしてあげたいって、いつも思ってる』
 そう彼は言ってくれたので、不覚にも桜子は泣いてしまった。同時に、大和に甘えるばかりであった自身を彼女は反省した。
 そんな中で、ブロック戦の組み合わせが決まり、緒戦の相手が大和の住所に程近い関八州大学に定まると、ひとつの考えが桜子の中に浮かんだ。
『あたしが、大和くんの家に行こう』
 触れあいを自分から求めれば、彼も遠慮はしなくなるはずだ。桜子はそう考え、大和が気兼ねなく自分を愛することができるように、今は一人暮らしになっているという彼の部屋を訪ねることを決めた。もちろん、状況によってはその部屋でしばらくは暮らすことも彼女は考えている。
 そのためには、姉夫婦の許可が必要である。
『むぅ……』
 意外にも龍介は、難色を込めた表情を見せたが…
『ええやろう』
 と、最後は認めてくれた。この家から離れると言えば少し大袈裟かもしれないが、それにも似た感傷が彼の中でせめぎあっていたのであり、簡単に言えば、娘を嫁に出す心境になったということである。
 一方で由梨は、始めから桜子の考えを理解してくれていた。
『大和くんはいま一人だから、あなたが支えてあげなくちゃね』
 花嫁修業にはちょうどいい、とまで由梨は考えていた。
“姉”としてだけでなく、“母”としても妹を世話してきた由梨は、どうしても桜子を甘やかせてしまうところがあったことを自覚している。故に、家事に疎くなってしまった桜子が、草薙大和という恋人との共同生活の中でその難しさと尊さを知り、女性としてさらに大きな成長を遂げてくれるのではないかと期待をしていた。
 親代わりの自分から、“親離れ”をするのに近い領域に、妹の精神が達していると判断した由梨は、それを応援しなければいけないと考えるようになっていたともいえる。それはつまり、自分が桜子から“子離れ”するという意味もあったろう。
「え、え〜っと……」
 玄関先でうろたえている桜子。当然だが、男の子の家に来るのは初めてである。しかも、今は一人暮らしとなっている…。
「おいでよ、桜子さん」
 一方で、大和は慣れたように桜子を部屋の中へと誘う。そこはやはり、経験の違いがある。


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