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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-94

「………」
 亮の頭の中はすっかり次の試合のことで一杯になっていた。そのため、ゆっくりと後ろに近づいてくる影に、気がつかない。
 首に何かが巻きついた。人の腕だ。
「ひっ!」
 びっくりした。ちょっと怖いお話は苦手な亮君である。
「………」
「あ、晶?」
 影は何も喋らなかったが、巻きついた腕はよく見慣れた恋人のものだ。そして、後ろから抱きついてくるのは、求めてくるときによく晶がしてくる合図。
(え、合図?)
 亮は、顔を後ろに向けた。なにやらもの問いたげな、切なそうな晶の顔。それもまたよく目にする、夜の一幕を待ち望む表情である。
「ど、どうした? 監督とエレナと、何処か行くんじゃなかったのか?」
 今朝、三人でそんな話をしていたのを、小耳に挟んだのだが。
「………」
 しかし、晶は何も答えない。ただ、じっと亮のことを見つめるだけだ。
「晶、あの……」
「“お願い”……まだ言ってなかった」
「………」
「“ろの間”、空いてるの。ふたりとも、出かけちゃったから……」
 勝ったら部屋を空けておくから――――本当に玲子とエレナはそれを実行した。有無を言わさず、自分を民宿に残し、二人で出かけてしまっていた。
 晶の息づかいに、甘さがこもる。その吐息が、頬をくすぐり、なんともこそばゆい。
「亮……ダメ、かな?」
 さすがに、状況のことを考えているらしい。なにしろ、多人数で泊まりにきた民宿で、しかも真っ昼間。誘うには、適当な条件といえない。
 だが、前日の痴夢と痴態に種火をやどし、今日の試合で完勝した昂揚感がその火を大きくし、“ろの間”が空いているという今の状況が、とうとう晶の身体を燃やしてしまったのだ。もう、体が疼いて仕方がない。
「亮……」
 晶が頬を寄せる。朱色に染まる柔らかいその頬は、とても熱い。
 かすかに……ほんのかすかに、亮の中にある官能がちりちりと焦げつき始めた。彼とて、数日の禁欲生活を経た身だ。そして晶同様に、試合に勝ったという興奮もある。
「あ、亮……」
 亮は、そ、と巻きつく腕を優しく掴むと、そのまま立ち上がった。晶もそれにつられて、膝立ちの状態から、身を起こした。
「………」
 何も言わず手のひらを握り締めてくる亮。それが答えだと、いうのだろう。
 ふたりは、並びあうようにして、“ろの間”へと消えていった。


 敷かれた一組の布団に、晶を横たえる。そして、優しく肩に手を添えたまま、亮は晶の唇を覆った。
 ふたりとも、生まれたままの姿になっていた。障子を全て閉めた客間は、薄く光が差し込むものの、気持ちを盛り上げるだけの暗さを生んでくれている。むしろ、その薄光によって浮かび上がった晶の白い肢体を、美しく演出している。
「ん……」
 甘く喉を鳴らし、亮の唇に応える晶。唇を浅く吸いあうように、ついたり離れたりを繰り返す。肩にあった亮の手が、頬を包んでくれる。それに倣うように、晶も愛しい人の頬に両手で触れてみた。
「ちゅ………ん、ん、んちゅ………ん……」
 唇の密着度が増していく。とめどなく想いが溢れて、暖かさをともなって、触れたところから行き来する。


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