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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-78

第5話 「遠 征!!」



 開幕戦で惜しくも、昨季総合優勝の強豪・櫻陽大学に敗れた城南第二大学だったが、それ以降は順調に勝ちを重ねた。
 2戦目の仁仙大学には、亮とエレナのアベックアーチ2本を含む強打で12−0と完勝。
 3戦目の享和大学には、晶の好投とチームの堅守で5−0と快勝。ノーヒットノーラン(四死球などでランナーは出したが、ヒットを打たれず、得点を与えなかった試合のこと)のおまけつき。
 3試合を消化して2勝1敗。獲得した勝ち点は6。総合の成績はいまのところ3位である。そして、今週末には4戦目の対戦相手・法泉印大学との試合を控えていた。
 しかし、昨年最下位だった城二大は、このチームを相手にするときは少しばかり骨が折れることになる。
 相手が強いというわけではない。なにしろこのチーム、いまのところ勝ち星がない。つまり、ダントツの最下位である。スコアを見ても、かなり苦しい状況を強いられているようだ。
 現在の城二大ならば、油断さえしなければ勝ちは堅いだろう。…では、なぜに骨が折れるのか?
 少し、説明しよう。
 法泉印大学は、実は、隼リーグの1部リーグに所属する大学の中で、もっとも遠い地区に存在するのである。なにしろ、高速バスを使っても2時間強はかかるところに、その大学があるのだ。協会が規定で定めた限界地域のギリギリである。
 それでも開幕当初から常に1部リーグに所属しているのだから、大したものといえよう。その姿勢が協会の心をうったのか、3年ぐらい前から特別規定が設けられた。
 “総合順位で法泉印大学よりも成績が下回ったチームは、次のシーズンは法泉印大学に最も近い公営の球場で試合をするというルール”である。これならば、法泉印大学の軟式野球部が、毎試合わざわざ遠いところまで出向く必要もなくなるだろうというのである。
 ちなみに、法泉印大学は昨季・総合4位だった。
 つまり、最下位だった城二大は、法泉印大学との対戦を前に、往復4時間かけた遠征を今週末に行わなければならないのである。



「というわけで、ワイらはバスに乗っとるんや」
「……誰に言ってるんだ?」
 隣に座る原田が、突然に独り言を喋りだした赤木のことを、憐憫の眼差しで見ていた。
「神や」
「……何を言ってるんだ?」
 それは、さておき。
 窓から見える景色の流れは、とても速い。北へ向かう高速道路は車の数もさほど多くはなく、非常にスムーズな道行きであった。
「それにしても、監督……いいんですか?」
 直樹が隣の玲子に問う。なにしろ、11人いる部員の宿泊費は全て彼女が持つと言い出したのだ。その合計金額、ばかにならない数字が並んでいるはず。
「んー。研究費で、浮いちゃったお金もあるし……こういうのって繰越できないから」
「そ、それは横領というのでは……?」
「課外活動費よ」
 モノは言い用であった。
「しかし……」
「こういうときは顧問に甘えるもんなの。移動費はちゃんと徴収したんだから、ね♪」
 玲子ウィンクが炸裂。直樹は、ぐうの音も出ない。
「それにしても、ついてたよね」
 これは晶の言葉だ。当然ながら、隣には亮が座っている。
「そうかもしれないな……」
 亮はなにやら、ぐったりとしていた。考えてみれば、遠征に向かう前から元気がなかったような気もする。
「日帰りだったら、俺、ぜったい死んでる……」
 そう。彼は、乗り物に弱いのである。
 バスに乗って1時間。まだ行程の半分にも達していないのに、亮はダウン寸前であった。


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