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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-276

 リリリリ!

「はい、こちら蓬莱亭! おお、エレナやないか、どないした?」
「エレナ?」
 赤木の威勢のいい声に、亮と晶が反応した。
「丁度いいところやな! いま、木戸と晶ちゃんもおるんや! おお、ほな、まっとるで!」
「エレナが、来るんですか?」
「長見も一緒や」
「栄輔も?」
「あと、ユウ坊もな」
「へぇ」
 長見ファミリー、勢ぞろいである。なにか祝い事でもあったのだろうか。
「龍介さん、6番・春定あがりました!」
「はいな! ……千客万来で、ワイも嬉しい。しばらくは落ち着かんから満足に話し相手もできへんが、勘弁してくれな」
 由梨の声に従い、嬉々として己の本分を尽くす赤木。そんな忙しない空気の中でも、亮と晶は、やってくるというエレナと長見栄輔を待つように、穏やかな時間を過ごした。
 やがて…

 がらがらがら

「いらっしゃい! おぉ、早かったのう!」
「GOOD EVENING!」
 体を折るように暖簾をくぐって姿を現した長身の女性。歓喜の笑みで顔をいっぱいにしたその表情は、年を経ても褪せることのない魅力を備えている。
「こ、こんにちは」
 その女性…エレナの右手をしっかりと掴んでいる幼い男児。少しだけはにかみながら、しかし、挨拶を忘れない利発さは、躾が行き届いている証であろう。
「ユウ坊も、いらっしゃい! ……あれ? 旦那はどうしたんや?」
「車で来ましたから。先にわたしたちを降ろして、PARKINGを探しています」
「うむぅ……駐車場がないというのが、この店の弱みやからのう」
 赤木が腕を組んで唸っていた。
「ちぃっす」
 それから間を置くこともなく、小柄な男が店に入ってきた。長見栄輔である。
「栄輔、久しぶりね」
「そうだな」
 軽く手を振ってきた幼なじみに少しだけはにかみながら会釈を返す。エレナの手をしっかりと握っている男児とまったく同じはにかみ方は、彼がその児の父親だからである。
「結構、混んでるな」
「こっちに座ればいいんじゃないか?」
 長見一家が落ち着く場所を探しているのを見て、亮は自分たちが座っているテーブルの空いている椅子に彼らを誘った。
「いいのか?」
「ああ」
 亮は一応、晶にも目線で確認を取ってみる。と言っても、晶は既に、男児の手をひいているエレナを、嬉々として自分のとなりに呼んで座らせていたから、同意を得る必要などなかったのだが。
「じゃあ、お邪魔するぜ」
 長見は、亮のとなりに腰を落ち着かせた。
 円卓はこれで全てが埋まり、賑やかなものになる。長見一家がオーダーした料理がテーブルの上に並んだことで、さらに華やかさも増した。
「新聞、見てたぜ」
 亮のグラスにビールを勧めながら、長見は言う。
「普通、国体ってのは地元のチームが有利なんだけどよ。でも、まぁ、木戸にとっちゃハンデにもならねぇか」
「そんなことは、なかったよ」
 長見の言うように、トーナメントの2回戦で対戦した地元の選抜チームとの試合は、少し自分たちへのジャッジが辛かった覚えがある。もっとも、それは予想していた通りのことでもあり、長見の言うようにその試合は完勝したので、気にする必要も本当のところはあまりなかった。


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