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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-240

 2点を先制された城二大ではあったが、その士気に衰えはなかった。
 続く5番の鈴木は、レベル0と晶が名づけたチェンジアップで三振にしとめ、それ以上の失点を許さなかった。完全にタイミングをずらされ、不恰好なスイングをした打者の様子を見れば、晶のレベル0は充分な威力を持っているとわかる。それが、チームに勇気を与えていた。
 櫻陽大に傾きかけた流れは、しかし、均衡した状態を保っている。その後、お互いに塁上をかすかににぎわせることはあったが、要所を締めて得点を許さず、回は進行していった。
 6回の表。城南第二大学の攻撃は、打順良く1番の長見からである。ウェイティングサークルに膝をついた状態で、しばらく彼は時を過ごしていた。
「? どうした、長見?」
 なかなか立ち上がらない彼を、斉木が怪訝な様子で窺う。
「あ、ああ……わりぃ」
 思い出したように長見が顔をあげると、ゆっくりとした動きでその場に立ち上がろうとした。
「!」
 しかし、びくり、と体を震わせると、その動きを止めてしまう。
「お、おい……」
 どうにも尋常でない彼の様子に、斉木は心配になってきた。
「す、すまねぇな。大丈夫だ」
 引きつったような、笑み。なんとなく、その顔が青ざめているようにも見える。
「どっか、痛いのか? ……まさか、あの時か?」
 斉木は、5回裏の櫻陽大の猛攻を凌いだ、長見の好守備を思い出した。
 櫻陽大の5回裏の攻撃は、2点タイムリーを放った二ノ宮からだった。彼は晶のレベル0を織り交ぜた緩急に惑わされながらそれでもしぶとく、鈍い当たりではあったがライト前に安打を放った。
 無死一塁で打席に4番の管弦楽を迎えたのだが、その初球に投じたレベル1・5の内角球を強烈に叩かれ、右中間への大飛球を放たれた。間を抜ければ、二ノ宮が一気にホームまで生還してしまったであろうところ、これを長見が、捨て身とも言えるほどのダイビングキャッチを試み、モノの見事にひっ捕まえた。余勢を殺しきれず、激しく横転しながらも彼は、掴んだボールを放さなかった。
 続く5番の鈴木は、レベル0にタイミングを外され、それでも持ち前の怪力でセンター前にふらふらと上がる飛球を放った。長打力のある打者ゆえに、心持ち奥まった位置にいた長見はしかし、猛烈なダッシュと飛び込みでこれを好捕した。このときも彼は凄まじい転がり方をしていたから、ひょっとしたらそのときに何処かを傷めたのかもしれない。
「行ってくる」
「お、おい長見……」
 斉木は、このことをベンチに伝えるべきだと思ったが、それをさえぎるようにして長見が打席に向かってしまったため、何も言えなくなってしまった。
「プレイ!」
 審判の声が響く。長見は、エレナの指導をきめ細かく思い出しながら、バットを軽く支えるようにしてコンパクトな構えを取った。
(いてぇ……)
 右のわき腹が、しくしくと痛みを発している。守っているときは何も感じなかったのに、ベンチに戻るなりいきなり、滲むようにして苦痛が身体に襲いかかってきた。
「ボール!」
 初球から、フォークで来た。長見は、それを振らずに見送る。いや、振れなかったというのが正しいかもしれない。
「ボール!!」
 二球目もフォークだ。やはり、それを長見は見送った。
「?」
 津幡が、意外そうな面持ちで長見をみやる。ボールを投げ返された京子も、思いがけずボールを選ばれてしまったことに、いくぶん調子を狂わせている様子だ。
 三球目は、ストライクを取りに来た。ストレートのスピードは乗っているが、コースが少しだけ甘い。らしくない、投球ではある。


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