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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-235

「さて、と」
 一死になったところで迎える打者は、醍醐京子。
(打つ方でも、こんなに楽しみなのは久しぶりかも……)
 攻守かわった女の戦いの始まりだ。
 普段は打撃にあまり関心のない京子であるが、だからといって彼女の打撃技術が劣っているわけではない。弱小チームの助っ人として参加した先の賭け試合(第7話)では、ひとりで打点を稼いだのだ。
 バットを短めに持ち、素振りを繰り返している。腰の回転を上手く乗せているバットスイングは、素振りとはいえなかなかに鋭い風を起こしていた。
「プレイ!」
 京子が打席に入る。幾分、キャッチャーから離れた位置に立っているのは、自分が投手であり、デッドボールなどによる負傷を気にかけてのことだろうか。
(………)
 亮はアウトコースにミットを構えた。バットを短く持ちながら、ベースから離れた立ち位置にいる京子を思えば、それは当然のリードだ。
 晶が大きく振りかぶり、引き絞るようにして腕を振った。その指先から放たれる光線は、亮のミットを寸分違わず射抜こうとする。
 しかし…
(!?)
 京子が大きく脚を踏み出した。明らかに、外角を狙っていたと見えるスイングだ。内角に来るかもしれないという恐怖心の欠片もないその思い切りの良さ。

 キンッ!

 一塁線を、鋭い打球が飛ぶ。バットを短く持ち、さらにコンパクトな構えから繰り出されたバットの鋭いスイングスピードによって放たれた打球は、低空のライナーとなった。
「うわっ!」
 一塁ライン際を飛んだその打球が、マウンド方向に向かって跳ねた。なんと、一塁ベースにダイレクトに接触し、固い角にでもあたったものか、原田が追いかけていたのとは逆の方向へボールが飛んでしまったのだ。
 慌てたように原田は追いかけようとする。しかし、そのために体勢を崩し、膝をついてしまった。
「!」
 ベースにあたったことで勢いの死んだボールは晶が抑えた。だが、既に京子は一塁ベースを駆け抜けており、あわよくば二塁も奪ってしまおうかと、こちらを窺っているほどの余裕を見せていた。
(あれほどの踏み込みを見せるとは…)
 相手のデータが何もない状況ゆえ、オーソドックスに外角から入ったが、それを狙って踏み込んでくるほどに思い切りのいい打者だとは想像もしなかった。バットを短く持っている時点で、それなりの打ち気を感じてはいたが、初球から積極的な攻撃を見せたものである。
(少し、迂闊だった)
 ボール球から入るべきだった、と亮は反省する。上位打線に注意を払うあまり、幾分リードが甘くなってしまった。
(………)
 亮は気を引き締めた。いよいよ、二打席目となる櫻陽大学の上位打線との勝負だ。
 まずは1番の津幡が打席に入る。明らかな打ち気を見せているその構えから、送りバントの可能性がほとんどないことを、亮は知った。
(晶、頼むぞ)
 亮はインコースの低めに、レベル1.5のストレートを要求した。

 ズバン!

「ストライク!」
 そして、その意に応えるような見事な速球が決まった。津幡が一瞬腰を引いたのは、それだけ内側を抉ってくるような角度を持ったストレートだったからだ。
(初戦のときは、球威が落ちたけど…)
 津幡はグリップを引き絞る。あれだけ勢いのある速球に負けないスイングをするには、そこかしこにある筋肉をバネのように絞らなければならない。
 二球目…今度は、アウトコースにレベル1の速球が襲いかかってきた。


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