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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-230

「打たされたって、ことか?」
「YES」
 長見の問いに頷きを交えて答えるエレナ。どうやら、外角に投じた時点で、中堅手の二ノ宮は飛んでくる打球を予測して守備位置を変えていたらしい。
「あのフォークを見せ球にしながら、ストレートで打ち取っていくつもりか」
 直樹はエレナに対する配球から考える。亮さえも三振に沈めた切れ味のあるフォークを、惜しげもなく見せ球にして、重い直球で打ち取っていくスタイルがバッテリーの呼吸なのだろう。
「なんで、あのフォークをもっと投げないんだろ?」
「下手に変化球を繰り返すと、知らないうちに守備のリズムは崩れる。そうなると、攻撃のほうにも影響は出てくるもんだ。やっぱり、ストレートで小気味よく投げたほうが、いいリズムってのは生まれやすい」
 と、相手側は考えているかどうか知らないが、捕手の視点から見ればそうなる。
「アウト!!」
 6番の原田は、二球目のストレートに詰まり、ショートゴロに倒れた。きびきびしたその守備陣の動きは、快調なリズムに乗ってきたという証でもある。
「ストライク!!! バッターアウト!!!」
 そのリズムのよさに飲まれてしまったか、7番の新村は、インコースを厳しく攻めてくるストレートに対して中途半端なスイングになってしまい、フォークを投げさせることもなく三振に倒れた。
「よしっ!」
 京子はマウンドで跳ねる。エンジンがかかってきたようだ。
(………)
 晶ほどの鮮やかさはないが、京子の投球はじわりじわりとプレッシャーを城二大に与えてきた。“晶の直球に比べ、速さに及ばない”という心の余裕は、忘れなければならないと、互いに確認せずともわかっていた。





「噂には聞いてたが、なかなか面白え」
 一塁側の内野席で観戦している壬生と智子。壬生は常備している小型双眼鏡を覗き込んでいた。
「どっちの先発も、女だてらにいいピッチャーだ」
 その双眼鏡から目を離し、グラウンドの全景を視界に入れる。きびきびした動きで城二大と櫻陽大の面々がその攻守を変えて、迎える2回裏の攻防に備えていた。
「肘の使い方とか、いいねえ。体も柔らかそうだ」
 投球練習をはじめている晶のフォームを確認しながら、壬生はなおも続ける。
「………やっぱ、血は争えねえ」
「え?」
「腕の振り方………あいつにそっくりだ」
 ふいに、壬生の声の調子が、なにかを思い出したような淡い色あいを湛えた。
「壬生さん?」
 智子が壬生の方を窺ってみたとき、彼は、いつもの豪快さが嘘のような、哀愁を込めたまなざしでマウンドを見つめている。
「あのお嬢ちゃんが、大きくなったもんだ。俺も、年を取るわけだぜ」
「………」
 取り留めのない彼の独り言に、問いを投げかけようとして、智子はやめた。何かそれを憚られるような雰囲気を、壬生の横顔から感じたためだ。
「いけー!! コテンパンにしちゃえぇ!!」
「桜子、あぶないからもうちょっと離れなきゃ」
 一塁側スタンドの最前列で、フェンスに張り付くようにして元気な声を張り上げている少女(桜子)。そして、そんな少女の背中を引っ張るように困った仕種をしている女性(由梨)。
「プレイ!」
 その声に触発されたわけではないだろうが、審判の声が高々と響く。
 智子は、壬生に聞きたいことを取りあえずは忘れることにした。






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