投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 215 『STRIKE!!』 217 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-216

「「キャプテン」」
 亮と、赤木の声がリンクした。松葉杖をつきながら、玲子に伴われて、直樹がそこにいたからだ。
「待たせたな」
「ごめんね、みんな」
「いや、キャプテンも監督も時間通りですがな。ワイのほうが、ちと、気張りすぎて……」
「赤木、ありがとうな」
「ワイは、何も……」
「俺がこんなになっても、チームが浮き足立たずにすんだのは、お前のおかげだよ。ほんとうに、ありがとう」
「キャプテン……」
「みんな、今日は、頼む」
 言うなり、軽く直樹は頭を下げた。
 直樹が試合に出られる状態でないことは既に知っている。だから、皆は大きく胸をはり、自分たちだけでも、大丈夫なことを二人に示して見せる。そうすることで、直樹と玲子が余計な心配と負い目を感じないようにと…。
 その様子に、二人は微笑んだ。そして、頼もしく思うのであった。
「由梨さん、桜子ちゃん。今日は、ありがとうね」
 なじみの深い姉妹が来てくれた事に、玲子は礼を言う。この二人は、今の軟式野球部員よりも更に古い関係でもある。由梨はまだ四捨五入すれば二十歳なので、年齢で言えばやや玲子の方が“お姉さん”なのだが、気のおけない会話ができるその関係は、親友同士といったほうが正しいだろう。そうなれば、妹の桜子も玲子を本当の姉のように慕うのは当然で、その眩いばかりにあどけない笑顔を玲子に向けていた。
「玲子さん、応援していますよ」
「みんなも、頑張ってね!」
 最後に皆がそれぞれ、軽い挨拶を蓬莱姉妹と交わす。
「行くぞ」
「応!!」
 直樹の号令に全員が揃った答えを返し、図らずも同じ動きで並びあった。そして、そのまま球場に向かって脚を進めていく。
 松葉杖をつきゆっくりと歩く直樹と、彼を支えるようにその隣を行く玲子。今までチームを支え、引っ張ってきた二人を先頭に、その歩調にしっかりとリズムを合わせて……。
 決戦の舞台に続く道を、いま、城南第二大学軟式野球部のメンバーが歩む。
「亮」
「ああ」
 晶と亮も、昂ぶるものを抱えながらそれに続いていた。
 舞台のお膳立ては、全てが整えられている。そして、残されたものは、その舞台の幕開けのみであった…。




『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 215 『STRIKE!!』 217 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前