投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 213 『STRIKE!!』 215 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-214

「………」
 市営球場の前で集った城南第二大学の面々。現地集合を申し合わせていたが、図ったように同じ時間帯に皆は顔を揃えていた。
 ただし、全員ではない。直樹は病院から直で来ることになっており、玲子はその付き添いのために少し時間がずれると言っていた。
 それを、公私混同というものは誰もいない。二人の間にある絆の強さは、誰もが知るところであり、それにつまらない茶々を入れようなどとは、考えもしないことだ。
 そういう意味では、本当にこのチームの面々は人が良い。
「早すぎた……」
 赤木は呟いた。そして、それは皆の総意である。球場入りができる時間には、まだ20分もある。
「1番乗りかと思ったんだけどね」
「俺も」
 晶は苦笑いで亮に言う。たいがいは、亮か晶が、他の誰よりも先んじて球場に来ているのだが、今日に限っては、赤木を始めとする三年次生が既に球場前に立っていた。
「気負いすぎやった」
「今日は、やむをえないところだろう」
 赤木の声に、原田が答える。
 なにしろ、優勝をかけた大一番なのだから。それに、負傷した直樹に次ぐ立場・副主将の座にある赤木だ。これで、気負わないでいられるほど、豪胆である自信は彼にもないだろう。
「ああ、そうや。さっき、キャプテンから連絡あってな。病院出たらしいから、あと10分ぐらいで来るそうや」
 赤木は揃った面々にとりあえず伝えるべきことを言う。
「脚の具合は?」
「試合には出ないように、念を押されたらしい」
 一瞬、場に沈黙がおりる。チームの攻守の柱である直樹がいない状況で、優勝をかけた一番を戦わなければならない。しかも相手は前期に苦杯を舐め、総合優勝の前に大きく立ちはだかる櫻陽大学。
「ええか、みんな」
 そんな中、赤木は諭す。
「キャプテンは懸命にワイらを引っ張ってくれた。去年、ボロボロになってもうたチームをそれでも見捨てんと、野球があんまり上手くないワイらを導いてくれた。そんなキャプテンの野球を、ワイは不本意な形でおわらしとうない」
 卒業年次生である直樹にとって、リーグ戦での試合は事実上、これが最後になる。
「勝つんや、今日は。そうすれば、キャプテンはもう1試合、野球ができる」
 だが、公式戦で残された試合はひとつある。それは、東西リーグ決勝戦である“甲子園”での試合だ。
「ワイらができること、それを懸命にやろうやないか。それで、勝つんや」
 “応!”と答えたのは、三年の面々である。亮たち二年次生よりも、直樹と1年多く過ごしてきた彼らだけに、直樹に対する信頼と恩義は、亮たちが思うよりも深いのだろう。
 赤木は、神妙に話を聞き続ける後輩たちに顔を向けた。
「木戸、晶ちゃん、長見、エレナ、斉木。ウチらの主力はおまえらといってもええ」
 何しろ、直樹を除けば上位打線は二年次生に集中している。
「赤木さん……」
「ワイらは、ワイらでできることをやる。精一杯やる。だから、おまえらも頑張ってくれ!」
 はい、と五人の声が揃った。この瞬間、チームの臨戦態勢は整ったといえよう。
「よーし……」
 赤木が自ら気合を入れるためか、頬をパンパンと叩く。まだ球場に入れる時間になっていないのがもどかしいぐらい、彼は気持ちを昂ぶらせているようだ。
(………)
 その気負いが、原田には気がかりである。なにか無理をしている気がするのだ。
「おにいちゃーん!」
「はい?……って、うわぁ!?」
 そんなとき、その赤木の背中に突然、何かが覆い被さった。
「とっ、とっ、と……」
 そのためにバランスを大きく崩したものの、しかし、なんとか横転を避ける。
 首に巻きついていたものを掴むと、後ろを向いてその何かを確認した。
「さ、桜子ちゃん!?」
「え?」
 三年の面々が、一様に声を上げた。よく見ると、確かに見知った顔がそこにある。


『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 213 『STRIKE!!』 215 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前