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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-192

 その結果は……破れたストッキングと、べとべとになった玲子のショーツ。生足になるのは別段気にならなかったが、このショーツをそのまま穿くのは遠慮したかった。それで仕方なく、何も下着をつけないまま帰路についていた。
「見えないよね? 見えてないよね?」
 それが、こんなにも頼りないものだと思わなかった。なんというか、通り抜ける風がそのまま股間の柔らかいところを素通りするので、まるでその部分が直に晒されているような気分になってしまうのである。
「………」
「ちょ、ちょっと、見ないでってば!」
 直樹が尻を直視している気がして、玲子は振り向くなり顔を染めて身を固くした。研究室で励んでいるときは、羞恥の欠片も見せず悶え狂っていた彼女だけに、そのギャップが少し楽しい。
「替えのパンティ……持ってくるんだった」
 ため息をつく玲子。既に日をまたぎかけている暗い道を、二人は歩いている。
 そんな夜道に、玲子をひとりで歩かせるわけには行かず、直樹は彼女の部屋に泊まることにした。ちなみに直樹の家は隣県にあるので、普段はそこから電車で通っている。
「あ……」
 ぶる、と不意に玲子が震えた。秋口に入っている今の時期、冷たさを帯びた風が吹くときもある。すぐさま直樹は上着を脱ぐと、それを玲子の肩にかけてあげた。
「あ、ありがと……」
 しかし玲子は落ち着きなく、その動きが止まらない。
「? 玲子さん?」
 さすがに怪訝に思った直樹が、彼女の横顔を覗き込む。玲子は顔を紅くしながら俯いて、その脚さえ止めてしまい、なにやら腰をもじつかせていた。
「………」
「あ、あはは……どうしよ……その……」
 聞かなくてもわかる。
 どうやら玲子は、“尿意”を催してしまったらしい。大学を出るときにトイレには寄ったのだが、冷たい夜風を内股に直に受けたため、体が冷えてしまったのだろう。
 直樹は周囲を見回す。しかし、公衆トイレらしきものは見当たらない。
「れ、玲子さん、部屋まで我慢……」
「できないと思う……」
 小刻みに震え出す玲子。どうやら、早くも限界がきているらしい。股間に右手を添えて、太股を、ぎゅ、と閉じ合わせている。それほどに、切羽詰っているのだろう。
「ど、どうしようか?」
 腰を振るわせて尿意を必死に抑えている玲子の姿は、はっきりいって扇情的だ。そんな自分を否定するように、心配そうな顔を貼り付けて玲子の肩に手を添える。
「ど、どうしよう……」
 瞼をきつく閉じて、歯をかみ締めて彼女は耐えている。
「………」
 玲子はちら、と脇にある暗がりを見た。緑が多い城南町を象徴する林が連なって、その奥まったところは闇が深い。
「え……」
 その真意を悟った直樹は、狼狽した。
「………ご、ごめんね、待ってて!」
 たたた、と玲子がその林の中へ身を押し込む。
 直樹はその背を追うこともできず、その背が闇に消えるまで呆然とするしかなかった。
 そのため、二人の遥か後方を忍んで歩いていた影が、まるで玲子が林の中に入ったのを見ていたように、同じ場所へ消えたことに、直樹は気がつかなかった。





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