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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-144

 1ヵ月後――――。
 留学先へ向かう飛行機を待つロビーに、悟と渚はいた。
 あれだけ騒々しく喚いていた星海大軟式野球部の面々も、何処から話を聞きつけたか見送りに駆けつけてくれた城二大軟式野球部のバッテリーも、二人を慮っていまは席を外している。
 ふたりに、言葉はなかった。もう今は、静かに悟と居られればそれで渚は良かったのだ。旅立つまでの短い間、彼は何度も自分を激しく愛してくれたから。
 別れまで、あと10分。
 顔を出すまいと耐えてきた寂しさが、ふつふつと沸いてくる。
 あと、5分。
 こらえきれない哀しみが、零れてしまいそうになった。
「ね、渚」
 そんなとき、悟がポケットから何かを取り出した。
 うつむく渚の目の前にかざしたのは、ちいさな正方形の箱。
「え……」
 それを優しく手渡され、渚は両手で受け取ると、促されるまま静かに蓋を開けてみた。
「あ」
 光が、目に入った。その正体は、白銀の指輪。
「ちょっとだけ、待たせることになっちゃうけど……」
 悟が、言葉をつなげていく。
「僕と結婚して欲しい」
「っ」
 瞬間、渚の瞳に熱い雫が溢れ出した。ぽろぽろ、ぽろぽろと小麦色の頬を伝って落ちてゆく。
「バカ……」
 それを拭わずに、真っ直ぐに悟を見据えて渚は言う。
「バカ……泣かないはずだったのに……バカ……」
「………」
「悟……悟……」
 愛しい人の名を呼んで、その胸にすがりつく。想いを刻み付けるように、上着に涙を擦りつける。
「待つよ、わたし……悟のこと……待ってるから……」
 いつか、渚は自分のことを“わたし”と呼ぶようになっていた。
「料理だって、もっと上手くなって……かえってきたとき、びっくりさせてやるんだから……」
「期待してるよ」
 いつも変わらない、爽快な微笑み
「いっぱい……いっぱい、子供を産んで……それで……野球のチームをつくろうね……」
「励むよ。……頑張らないとね」
 いつもそばにいた、優しい微笑み。
「悟……愛してる……」
「僕もだよ。渚を、誰より愛してる」
 もう言葉は要らなかった。深く、唇を重ねあう。
 想いの数だけ、心をつなげて。そして、二人の絆に変えて。
 いつまでも…“旅立ち”というしばしの別れが迫る中、いつまでもふたりは新たに生まれた絆の強さを確かめあっていた。



「わかった?」
「え?」
「帆波さんの、左手の薬指」
 星海大学の好捕手・山内悟を見送りに来た亮と晶は、彼を乗せた飛行機が飛び立った後、飛行場を後にした。そのとき、星海大の面々といろいろ挨拶を交わしたのだが、その中で晶は、試合のときとは見違えるほど綺麗になったエース・帆波渚の薬指に光るリングを見つけていた。
「エンゲージ・リング……彼女、幸せそうだった」
「はぁ……やるね、山内君も」
 回生が同じだから、歳は自分と変わらないはず。それなのに、大きな夢を目指して日本を旅立ち、しかもその寸前に、生涯の伴侶と定めた女性に終生の愛を誓った山内悟。
 なんとも、スケールの大きい人間ではないか。
「なんかね……あてられちゃった」
「お、おい……」
 晶が腕に絡みついてきた。


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