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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-132

(二つは、当たり前だっての)
 古典的であると、言って欲しい。
「あ、ちょっと痛くなくなりました」
 布地の摩擦がなくなり、外気に触れたことで、腫れたその部分からの痛みが沈静してきたらしい。
「どうする? 湿布でも貼るか?」
 見たところ、そこまでひどい腫れでもないが、一応聞いてみる。
「あの……」
 エレナが、ベッド下にある右の引き出しを指差した。長見は、指示通りに開いてみる。
 湿布薬、バンソウコウ、錠剤、ガーゼ、体温計……など、医薬品が所狭しと詰まっていた。
「そこに、ザ・ガマ・オイルというのがあると思います」
 あった。カエルにのった赤い仮面の男をプリントした、奇妙な軟膏である。
「それを、塗っていただけますか?」
「………」
 すっごく、怪しいんですけど。
(大丈夫なのかよ……)
 とにかく長見は蓋を廻して、外してみた。意外に普通の、乳白色の軟膏が底の部分に残っている。
「打ち身とかによく効くのです」
 まあ、使った本人が言うのだから間違いはないだろう。
「俺が……塗っていいんだな?」
 エレナの真っ赤に腫れた臀部に、直接触れることになるが……。
「はい、お願いします」
 何度となく身体を重ねあった二人だ。エレナは何のためらいもなく、答えていた。
 長見は人差し指と中指で、軟膏を掬い取る。そして、エレナの左の尻に、まずは数滴まばらに塗ってみた。
「ン、ツ……」
 ぴくり、とエレナが震える。ちょっとした痛みが、身体を走ったようだ。
「あ、大丈夫ですから……」
 動きを止めた長見を先に促す。それをうけて、長見は指先で軟膏を伸ばし始めた。柔らかい肉厚な彼女のヒップの感触が、指に気持ちいい。
「ン………」
 エレナが喉から息を吐く。その吐息…とても、艶かしい。
 薄くのばした軟膏を補充するように掬い取っては、また塗りこめる。左の尻で赤くなっているところを覆った後、今度は右の尻に移った。
「お、と……」
 軟膏がなくなってしまった。開いている引き出しの中身を確認してみるが、同じパッケージのものは存在しない。
「ふーん、こっちかな?」
 長見はなにも考えず、左側の引き出しに手をかけた。
「!!!」
 瞬間、エレナの表情が凍りついた。中に何があるか、知っているのだから。
(で、でも、鍵が……)

 ガラッ…

「!!??」
 いつもは鍵をかけているはずの引き出しが、いとも簡単にスライドした。ひょっとしたら、この間、引き出しを開け放したときのまま、今まで置いておいたというのか…。
「え……」
 長見の全てが硬直していた。その視線は、医薬品が詰まっていることを想像して開いた引き出しの、予想さえできなかった中身の真実に注がれている。
 電動バイブ……ディルドー……エッグローター……ローション……ア×ル・パール……ア×ル・バイブ……エネマシリンジ……シリンダー式浣腸器……などなど。ありとあらゆる、淫具がそこに収まっていたからだ。
「………」
「………」
 動かない長見。そして、動けないエレナ。
 思いがけない恋人の秘密との邂逅、そして、あまりに早すぎる隠された恥部の露呈。
 ただ、沈黙だけがそこにはあった。







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