投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 115 『STRIKE!!』 117 『STRIKE!!』の最後へ

『STRIKE!!』(全9話)-116

「いてて……」
 同じ所を二度打って、さすがに苦痛が顔を出していた。それでもすぐに笑顔をつくり、悟はボールを投げ返した。
 一死満塁・カウント0ストライク3ボール。守る側としては、絶望的な状況。
「ナギ! 押し出しぐらい、どうってことねえぞ!」
「まだまだ回はあるんだからな! 1点や2点、くれちまえ!!」
 なのに、やけに活気だつ相手守備陣。それらの声に押されるように渚が頷いて、精悍な顔をますます引き締めた。
 大きく振りかぶって四球目。鋭く振られたその腕は、インコースめがけて白球を弾いた。
 ストライクゾーンを通ると思われたその球に、亮が振りにかかる。
「!?」
 しかし、バットを途中で止めた。彼にしては、珍しい半端な行為だ。
 ミットを貫く、乾いた音が鳴った。
「………」
 一瞬の沈黙が生まれたその後で、
「ボール! フォアボール!!」
 審判が一塁を指し示した。
「押し出しや!」
「先制点だ!」
 赤木と原田が同時に沸いた。
 亮が一塁へ向かう。それに押し出されるように、塁上を埋めていた三人がそれぞれ進塁する。
 三塁走者の晶が、ホームを踏んだ。城二大、1点先制の瞬間である。
「よっしゃ! いけいけや!!」
「エレナ! GOだぜ!」
 陽気に踊る赤木に呼応したのは長見。亮ほど神がかっていないが、エレナとてチームの点取り屋だ。それに、均衡が続いた試合でようやく先制したとあって、チームの勢いは盛り上がっている。
 ムードに乗りやすい彼女だから、この場面は期待が持てた。
 打席にエレナが入り、構える。
 渚が、やはり大きく振りかぶり、初球を投じた。
「!」
 ど真ん中のストレート。当然、エレナは振りにかかる。
 城二大の誰もが、そのバットから快音が響くと信じていた。

 ごつ…

「!?」
 しかし、エレナの鈍い振りから弾かれたボールは、渚の真正面に転がっていた。
「なっ……」
 城二大の面々が声をなくす中、渚はそのボールを掴むとホームへ送球した。受け取った悟がベースを踏んですぐに一塁へ。もちろん、余裕を持って打者走者のエレナをアウトにしとめた。
「アウト! チェンジ!!」
 絵に描いたような ホームゲッツー(満塁のときに、内野ゴロを打たせ、ホームと一塁で二つのアウトを取ること。攻撃側としては、もっとも勢いを奪われるプレーである)。大量得点のチャンスが、あっという間に攻撃終了。
「あ……」
 6回の表に、1点を示す数字が加えられた。間違いなく城二大は、先制点を奪ったのである。
「なんだ、1点だけか………?」
 しかしそれは、失ったチャンスのあまりの大きさに、何処か小さく頼りなげなものとして目に映った。





『STRIKE!!』の最初へ 『STRIKE!!』 115 『STRIKE!!』 117 『STRIKE!!』の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前