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『STRIKE!!』
【スポーツ 官能小説】

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『STRIKE!!』(全9話)-114

「くっそー! こいつら、コロコロ、コロコロと……!」
 バント作戦に炒りついている渚。いい当りをされたのは先頭打者の晶だけだが、招いたピンチは今までの中でもっとも大きい。
「渚、大丈夫だよ」
 しかし相変わらず飄々としているのは悟。タイムを取ってマウンドに来たから、なにか言われるかと思ったが、その笑顔に陰りは全くない。
「アレ、使おうよ」
「え、ちょっと待てよ。アレ、まだ完璧じゃねえんだ」
 悟の言葉に対し、珍しく弱気な渚。
「その……ストライク取れるかわかんねーし、ワンバウンドだってするかもしれねえし……」
「ふーん。渚、自信ないの?」
「え?」
「僕は、あの球を早くみんなに見せてあげたいな。きっと、びっくりするだろうね」
「………」
「後ろには逸らさないよ。フォアボールなんか、いくらでも出していい。僕たちが、取り返してあげるから」
「……わかったよ」
 渚がため息を吐く。
「覚悟しろよな、何処にいくかオレでもわかんねえから!!」
 悟はその答えに、満足したような笑みを浮かべると、そのままポジションに戻った。
 渚はスコアボードを見る。0がびっしりと並ぶお互いのスコアは、よく見ると自軍の安打数を表す表示にも数字が入っていない。つまり、ヒットを1本も打っていないのだ。
(この状況で、“取り返してあげるから”かよ……へへっ、いい根性してるぜ悟)
 言われたことは現実味のない根拠もない励ましなのに、渚は嬉しかった。甲子園で四死球を乱発したときのことを思い出す。
(あの時は、みんなオレを白い目で遠巻きに見るだけだった……)
 しかし、この山内悟という女房は違う。いつでも笑顔で見守ってくれるし、自分に自信をくれ、安心もくれる。
(へへ……“取り返してあげるから”か……)
 もう一度、胸のうちで繰り返す。あの時、誰でもいいからそう言って欲しかった言葉をくれた悟。
 心が、とても、暖かかった。



 またとないチャンスに、まずは3番の直樹が打席に入る。最初の打席は三振、次の打席はファーストゴロと、結果は出ていないが、いずれの打席も多くの球数を相手に投げさせており、見えないところでのプレッシャーは与えている。
 左打席に入る。玲子の視線は、“がんばって”と伝えていた。
(………)
 構える。狙いどころは、“日の出ボール”。先の打席では、鋭い当りのファールを連発した。タイミングは、合ってきている。
 初球、内角を抉るようなストレート。見送るが、ベースをかすっていたのでストライクを取られた。
 二球目、やはり内角を突く直球。これも見送る。
「ボール!!」
 すこし、内側によっていたからだ。
 三球目にそれは来た。



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